マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
「選手の夢」欄に出るセンバツの姿。
プロ志望と普通の高校生が戦う奇跡。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byKyodo News
posted2018/03/29 06:30
大阪桐蔭を相手に、1人で8回まで24のアウトを積み重ねた伊万里・山口修司。それだけでも誇っていいことだ。
ほとんどプロ志望vs.普通の高校生。
大阪桐蔭vs.伊万里。
その試合前に、両校の選手たちの夢を、なんとなく眺めていて気がついた。
大阪桐蔭、当然のようにほとんどの選手が「プロ野球選手」を挙げているのに対して、伊万里の選手の中に「プロ野球選手」を挙げる者が1人もいない。
公務員、教師、薬剤師、消防士、理学療法士……。末吉竜也一塁手「子ども2人」、犬塚晃海遊撃手「いい車に乗る」。いいなぁ……と思う。
ほぼ全員プロ志望vs.普通の高校球児。
いったい、どんな試合になるのか。そのゆくえが、とても興味深かった。
試合前のシートノック。 まず、大阪桐蔭だ。
ここから圧倒してやろう! の意気込みが、見ているだけで伝わってくる。
回すボールが強い、強い。投げながら、内野手たちがみんな跳んでいる。ぼんやり見ていると、ほんとに圧倒されそうなボール回しだが、よく見ると、ちょっと急いでないか。
「見せてやる!」の勢いが余って、つま先体重で捕球してつま先体重で投げるので、上体が前傾して送球の軌道がばらつき気味。
それがシートノックにも持ち越されて、送球があちこちになる。実戦で破綻がなければいいが……と心配になる。
伊万里のノックから透ける基本理論。
一方の伊万里はどうか。
これが、しっかりとスパイクの真ん中に体重が乗った動きになっていて、上体が前のめりになっていないから、気持ちよく腕が振れてストライクでボールをつないでいく。
いたずらにスピードを追わない。まず精度あってのスピードであることを心がけているかのようなボール回し、そしてシートノックのスローイング。基本理論を踏まえた上で、しっかりと反復練習を繰り返してきたことがうかがわれる。