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イタリア代表と“耽美主義”の血筋。
異端者ゼーマンの弟子に託す復活。 

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手嶋真彦

手嶋真彦Masahiko Tejima

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photograph byGetty Images

posted2018/03/28 10:30

イタリア代表と“耽美主義”の血筋。異端者ゼーマンの弟子に託す復活。<Number Web> photograph by Getty Images

ディビアージョ暫定監督(前列中央左)のもとでアズーリは再出発の時を迎えている。

攻撃至上の信念を叩き込まれて。

 何よりも負けないことを優先させるイタリアのカルチャーの中で、常に勝つためにプレーしていたゼーマンのチームがいかに異質だったか。攻撃至上の信念の揺るぎなさに、どれだけの値打ちがあるか。

 そんな話をしていたディビアージョは、現役時代は異なる3つのクラブで、5シーズンに渡ってゼーマンに師事している。21歳にしてゼーマンの下で台頭(フォッジャ時代)すると、26歳で再会したローマ時代にイタリア代表入りを果たし、現役引退が近づいた34歳の頃には短期間ながらセリエB(ブレシア時代)で師弟関係を復活させている。

 ディビアージョがイタリアU-21代表監督だった昨秋には、ゼーマンが当時率いていたセリエBのチームに強化試合の相手を引き受けてもらうなど、いまだ強い影響下にあるようだ。

“耽美主義の敗者”というレッテル。

 1947年生まれのゼーマンはチェコ人だが、監督生活のほとんどをイタリアで過ごしてきた経歴の持ち主だ。地方都市の小クラブ、フォッジャやペスカーラを大躍進させた手腕を買われ、強豪のラツィオやローマなどに招聘されたものの、得点だけでなく失点も多く、在籍13シーズンに及んだセリエAでは優勝争いに一度たりとも絡めなかった。

 攻撃的な姿勢を貫き、多くのファンを高揚させる一方で、“耽美主義の敗者”というレッテルを貼られもした。

 国際的な地位を低下させ続けるイタリアが、暫定の代表監督とはいえゼーマンの系譜に連なるディビアージョに白羽の矢を立て、ディビアージョがその初陣でゼーマンの“遺産”とも言えるインモービレ、インシーニェ、ベッラッティの隠れユニットを先発させたのは、皮肉な事態と言うべきだろう。イタリアをイタリアたらしめてきた勝利至上主義が、曲がり角を迎えているひとつの証でもあるはずだ。

 その意味でも、3月27日のイングランド戦は大きな注目に値する。リオネル・メッシが故障欠場したアルゼンチンには、いいところなく0-2で敗れた。連敗を喫すれば、おそらくディビアージョから「暫定」の二文字が取れる可能性は低くなる。すでにアントニオ・コンテ(現チェルシー監督)やロベルト・マンチーニ(現ゼニト監督)が、代表新監督の有力候補として取り沙汰されている。

【次ページ】 たった2試合で見切ってしまうのは……。

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