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サッカースタジアムで最高の観戦席は?
PSGが誇る世界のセレブ垂涎のVIP席。
posted2018/03/25 08:00
text by
オリビエ・ボサールOlivier Bossard
photograph by
Aglae Bory/L'Equipe
ニコラ・サルコジ元フランス大統領がパリ・サンジェルマン(PSG)の熱烈なサポーターなのは有名な話である。青年のころは「パルク・デ・プランス」(パリ・サンジェルマンFCのホームスタジアム)に年間シートを持ち、若手政治家として将来を嘱望されるようになってからは、“カレ(Carre)”と呼ばれる貴賓席からPSGのホームゲームをすべて生で観戦していた。
そのパルクの貴賓席を、オリビエ・ボサール記者が『フランス・フットボール』誌3月6日号で伝えている。
PSGのようなビッグクラブにとって、貴賓席はどんな意味を持つのか。今日ではパリで最も洗練された場所のひとつに数えられるまでになったパルクの貴賓席は、クラブやそのオーナーであるカタール財団(QSI)にとってどんな意味を持つのか。そこではいったい何が起こっているのか――。
クラブ首脳にとって重要な戦略の拠点である貴賓席の実態を、ボサール記者がレポートする。
監修:田村修一
試合直前、突如大統領が観戦希望!?
PSGのミシェル・デニソ会長(1991~98年まで会長。テレビ局「カナル+」の敏腕ディレクターでもあった)が、招待客たちと乾杯の挨拶をしている。彼らのほど近くでは、歌手のエンリコ・マシアスがテレビタレントでプロデューサーでもあるミシェル・ドラッカーと談笑している――試合開始1時間前の、ある夜の風景である。
手帳と携帯を両手に携えながらヴァレリー・ドラロシュブロッシャールは、パルク・デ・プランスで最も重要なこのスタンドで、1992年から2011年まで献身的に働き続けてきた。
面白い逸話には事欠かない。
働いていた当時の思い出の数々を、彼女に振り返ってもらった。
「たしか90年代の終わりのころのことでした。キックオフ直前に携帯に電話があったんです。エリゼ宮(大統領官邸)からで、ジャック・シラク大統領(当時)が7人の同僚を連れて試合を見たいから席を至急用意して欲しいという。席はひとつしかなかったのですが、大統領に向かってノンと言えるわけがない。あそこでは本当にいろいろ学びましたね(笑)」