JリーグPRESSBACK NUMBER
ハマの守護神は小さくても守れます。
マリノス飯倉大樹の巧妙なGK技術。
text by
岩崎龍一Ryuichi Iwasaki
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2018/03/22 11:30
ポステコグルー新体制で飯倉大樹の走行距離が話題となっている。それとともに本分のGKとしてのプレーも見逃せない。
松永、川口、榎本と180cm前後の選手が。
JリーグのGKの平均身長が185cmを超える中、181cmの飯倉は小柄の部類に入る。その状況でトップのポジションを得るためには、プレー1つひとつのディテールにこだわるしかない。幸いなことにマリノスというクラブには、長身ではないGKを育ててきた伝統がある。現在、GKコーチを務める松永成立、川口能活、榎本哲也。歴代のレギュラーとして活躍したGKは、揃って180cm前後の身長なのだ。
身体能力と技術が同じならば大型選手に利があることは疑いない。ただ、多少の身長の差は技術と洞察力で補える。前提となるのは、ゴールを守るということに対する意識の高さと責任感だ。完璧を求めることを怠らなければ、失点の数は確実に減らすことができる。
Jリーグの得点場面を見ていると、気づくことがある。シューターがボールをインパクトした瞬間に、空中に両足が浮いたままのGKがあまりにも多過ぎるのだ。しかも、そこには日本代表キャップのある選手が数多く含まれている。
飯倉のプレジャンプは一見の価値あり。
近年のGKが、シュートストップの際の予備動作として行うプレジャンプ。これには主に3つの効能がある。前方にジャンプし着地することで、両足に均等に体重を掛ける体勢を作り、筋肉に刺激を入れる。しかもシュートコースを狭められる。ただしタイミングを誤れば、致命的だ。空中に浮いている間は、スーパーマンでもない限りセービングの方向転換は不可能ということだ。
飯倉はその意味で、プレジャンプを実に巧妙に行なっている。シューターとの駆け引きの問題なのだが、相手がボールをインパクトする時点では常に動作が終了し、両足が地に着いている。時にはプレジャンプをしなかったと思わせることさえある。だからどのような球筋にも対応できるのだ。
「身長が小さい分、プレジャンプは自分の中では結構大事ですね。しないとシュートコースを狭められない。ただ、プレジャンプにはデメリットもある。タイミングがずれた時にボールに反応できなくなってしまう。だから高く跳ぶというよりも低く。跳んでもすぐに着地して動けるイメージでやっている」
ゴールキーピングのすべての行動の裏付けとなるのは、次に起こり得ることの事前察知だ。そのために対峙する相手を注意深く観察する。ボールを持つ体勢、目線、トラップした後のボールを持ち出す角度。次に何をしてくるのか。