松山英樹、勝負を決める108mmBACK NUMBER
松山英樹、手探りの復帰戦を終えて。
「話にならない」発言、逆の意味。
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph bySonoko Funakoshi
posted2018/03/20 11:40
タイガー・ウッズと回った予選は、松山英樹にとって予定よりも騒がしかっただろうが、ラウンド終了後にはがっちりと握手した。
いい流れを止めてしまった1カ月半。
半年や1年、2年という長期戦線離脱と比べれば、松山の1カ月半は「短期」だ。だが、昨夏に世界選手権シリーズのブリヂストン招待で快勝し、翌週の全米プロでメジャー優勝ににじり寄り、高いレベルで戦える状態へ持っていき、マスターズ制覇を間近に感じながら2018年を迎えていた松山にとって、その流れを突然途切れさせた1カ月半は、いろんなことを変えてしまいそうな長さではあった。
親指に痛みが出るかどうかがわからないことに加え、試合で戦うという感覚そのものがどこまで失われているのかもわからなかった。
失われているのだとすれば、いつ、どうやって、どのぐらい取り戻すことができるのか。マスターズに間に合わせることはできるのか。
さまざまな不安があったのだと思う。だが、松山は多くを語る代わりに、黙々と練習グリーンでパット練習に打ち込んでいた。
予選2日間は、タイガーと同組の喧騒。
試合から離れていた1カ月半を経て、ゴルフそのものがどう変わったのかと言えば、松山は想像以上にその変化を感じていた。
オーランドの自宅近くのホームコースで練習し、「いい状態に仕上がっていた」。だが、独特の空気に満ちた試合会場へと練習の場を移しただけで「思ったように振れなかったりする」と違和感を覚えた。「試合になったら、もっとうまく行かないと思う」。
ホームコースから試合会場へ、練習から実戦へ。日頃は当たり前にこなしていたそうした流れですら、復帰戦に挑もうとしていた松山にとっては、なかなか手強い難関だった。
そして、その難関にはさらなる要素が加わり、もっと難関になった。予選2日間は復活優勝が期待されていたタイガー・ウッズと同組。
「本音を言えば、もっと静かなところで回りたい」
だが、松山はその状況を逆利用するかのように、好プレーをしていたウッズのリズムとペースに自身の歩調を合わせていった。
初日は 2アンダー、2日目はイーブンパーで回り、予選を通過。「久々の試合で(予選で)落ちることなくできた」ことに、まずは胸を撫で下ろした。