フランス・フットボール通信BACK NUMBER
中国サッカーバブルの終焉か。
外国人選手の爆買いが激減した事情。
text by
ロベルト・ノタリアニ with ナビル・ジェリRoberto Notarianni avec Nabil Djellit
photograph bySABRIE GILLES
posted2018/03/07 11:00
中国人選手に挟まれて練習に励むアルゼンチンのラベッシ。PSGから河北華夏幸福へと2016年に移籍して、今季で3年目となる。
今季、高額移籍が劇的に減った理由とは?
ところが、である。
2月28日に締め切られたこの冬の移籍市場では、CSLのすべてのクラブ合わせて8000万ユーロを少し下回る額しか移籍に使っていないのである。
2016年が3億4700万ユーロ、2017年は4億1300万ユーロであったことを考えると……劇的なまでの減少であると言わざるを得ない。
では、なぜ、これほど急激な変化が起こったのか?
それはクラブの経済事情というよりも――大多数のクラブは健全な状態を保っている――中国政府がサッカーに対する政策を大転換したことによるのである。
当初政府は、優遇税制という間接的な手段で、大企業や資産家たちがサッカーに積極的に投資するのを支援していた。それは習近平国家主席が今後10年のうちにワールドカップを開催し、2050年を目途にワールドカップ優勝を目指すという意志を表明した時期とときを同じくしていた。
結果はどうだったか。
起こったのは天文学的な移籍金高騰と選手の年俸の上昇だった。
中国政府が導入した「贅沢税」の衝撃。
「戦略はある程度成功した。世界の注目を中国に集めることに成功したのだから」と、CSLの複数のクラブと提携しているある代理人は言う。
「だが当局は、中国のクラブが永久的に世界サッカー市場の金づるであり続けることを望んではいない。どんな選手にも大金を支払うことをよしとしていない」
市場の自動調節作用による鎮静化を待つことなく、中国政府は自らの手でサッカーバブルに終止符を打ったのだ。
それが「贅沢税(luxury tax)」の導入だった。
600万ユーロを越える移籍には、クラブはほぼ同じ額をサッカー文化発展のための基金として供出しなければならない。
これは短期的な投資に集中していたクラブオーナーたちの目を、サッカースクールの創設やプロ育成のためのアカデミー設立など長期的な展望に向けさせるための政策であり、同時に資本の海外流失に歯止めをかける政策でもあった。