炎の一筆入魂BACK NUMBER
タナキクマルがいれば広島は安泰。
28歳の3人は若手の最高の教材だ。
text by
前原淳Jun Maehara
photograph byKyodo News
posted2018/03/06 07:00
昨季は丸がMVPと最多安打、田中が盗塁王に最高出塁率、菊池も5年連続のゴールデン・グラブと多くのタイトルを獲得した。
広島の猛練習という伝統を体現する3人。
ただ彼らは周囲からの期待を重荷とはせず、新たな使命として成長の糧にしている。
2年連続フルイニング出場を果たし、菊池と丸に並ぶチームの絶対的レギュラーとなった田中には、自覚と覚悟が芽生えている。
「レギュラーとしてしっかりやらないといけない。当たり前のことですし、若い子たちも当たり前のことをやらないといけないと思うでしょう。それに僕らもレギュラーという立場に甘んじているつもりはないところも見せないといけない」
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背中で引っ張るだけでなく、さらなる高みを目指す強い意志の表れだ。
思いは行動に表れる。猛練習で鍛える広島の伝統を体現する彼らの姿が、若手の生きた教材となる。
新戦力が少ないだけでなく、石井琢朗打撃コーチ、河田雄祐外野守備走塁コーチがともに退団(ヤクルト加入)したことも、広島にとっては不安材料となりかねない。現に今春キャンプでは、走塁や盗塁に特化したメニューが組み込まれなかった。
広島にとって機動力は攻撃の大きなウエートを占めるだけに、意識低下に一抹の危機感を感じたが、昨季盗塁王の田中は微笑みながら一蹴した。
「全体でやっていなくても、個人ではやっている。屋内でチューブとかやっていますよ。人前でやるのがあまり好きじゃないだけですよ」
昨季中続けたスタート時の体幹の意識付けであるチューブを使ったトレーニングなどを選手が自主的に行っている。
オープン戦での出だしも好調そのもの。
2月7日の春季キャンプ第2クール2日目。初めて行われたシート打撃では、二塁走者だった菊池が三塁ゴロでサードが一塁へ送球する間に三塁を陥れた。
まだ肌寒い1次キャンプで、しかも初めて行われた実戦形式での好判断、好走塁は「今年はより次の塁を狙う走塁が大事である」という男の何よりのメッセージだった。
実戦に入っても調整と割り切らず、貪欲に結果を求める。初戦から3人が定位置の1、2、3番に入り、結果を残した。2回途中ノーゲームとなった2月25日の巨人とのオープン戦(那覇)では、3連打のそろい踏み(盗塁失敗などで無得点)。
好スタートに、菊池は「何か安心感がありましたね」とにやりと笑い、そして「出ているからにはやらないといけない」と続けた。