フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
プロの舞踏家が語る女子フィギュア。
世界トップ選手達への評価が面白い。
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byKaoru Watanabe/JMPA
posted2018/02/20 17:00
宝塚の田尾真理子に表現力を、吉田都にバレエの指導を受けた宮原の美しい演技。
ちょっと手厳しい評価? のザギトワ。
さて、その彼らの具体的な評価である。
< アリーナ・ザギトワ『ドン・キホーテ』 >
A氏:動きがたくさんありすぎて、1つひとつの動きに終わりがない。派手ではあるが、1つひとつの動きに意味合いがない。
B氏:振付を詰め込みすぎていて、体のラインが美しく見えない。動きが雑で、意味不明な動作が多い。きちんと動きが完結しておらず、脚のラインを出す動きでは、きちんと伸ばすのではなく蹴り上げている印象。振付としても良い作品には思えない。
このようにプロのダンサーから見るとかなり手厳しい評価である。さて、次は世界女王のメドベデワだ。
意外と美しく見えないメドベデワ!?
< エフゲニア・メドベデワ『アンナ・カレーニナ』 >
A氏:このプログラムを見ると、彼女の体のラインが美しく見えない。アンナ・カレーニナのかけらも見えない。足の上げ方が美しくなく、“アラベゴン(「真後ろに上げる正しいアラベスク」のポジションではなく、微妙に横に抜いてお尻が開いてしまっている状態)”に見える。これは『ドン・キホーテ』のザギトワも同じだった。
B氏:体のコントロールは良いが、脚がいまひとつ伸び切っていない。振付として見ると、忙しすぎて作品として訴えてくるものがない。ドラマチックに仕立てすぎ。足のポジションは、アラベスクなのかセコンド(アラベスクのバリエーションのひとつ)なのか、雑に見える。ダンスアーティストとして見ると、未完成。
素人目には十分美しく見えるメドベデワも、ダンスのプロの目から見るとこのような欠点が目に付くという。モスクワの彼女たちのトレーニングリンクにはバレエ教室もついているはずなので、指導側はあくまで「スポーツ」であることを優先させたのだろうか。