相撲春秋BACK NUMBER
角界ならではの教育的指導とは何か。
ある部屋で目にした「愛のゲンコツ」。
posted2018/02/20 10:30
text by
佐藤祥子Shoko Sato
photograph by
Shiro Miyake
元横綱日馬富士による暴行事件を受け、日本相撲協会は2月、「暴力問題再発防止検討委員会」を立ち上げた。
その実態把握のため、親方や力士など約900名の全協会員から、聞き取り調査を実施すると発表した。過去に遡っての実態の把握、再発防止策の実効性を高めるための諸問題の検討と対策、及び提言――。しかつめらしい言葉が並ぶ。
はたしてどこまでの実態を把握できるのだろうか。
「理不尽な暴力」はどんな世界でもあってはならない。しかし「角界ならではの教育的指導」(この文言が閉鎖性・特殊性を表してしまうことにもなるが)もすべて否定されてしまうのだろうか。
土俵に転がされ、汗と涙でぐちゃぐちゃに。
相撲界は、言わずと知れた男による男のための社会だ。究極の「体育会系の男たち」の修業の場でもある。屈強な男たちは日々、稽古場で頭からぶつかり合い、額を割って血を流す。
土俵に転がされ、汗と涙でぐちゃぐちゃになった顔で兄弟子にぶつかっていく。稽古をつけてくれた兄弟子に、「ごっちゃんでした!」と息を切らし、声にならない声で叫ぶ。
力士たちは、肉体で会話する。相撲界は肉体が「言語」の世界でもある。
ワイドショー風にいえば「相撲取材歴25年の女性ライターが見た角界の暴力!」とでも銘打たれるだろうか。筆者は、2007年に起こった「時津風部屋新弟子死亡事件」のあと、私的なブログにこんな記事をアップしていたのを思い出し、ここに再掲する。