球道雑記BACK NUMBER
先輩・源田壮亮に学んだ奥義を!
ロッテのドラ2藤岡裕大の“送球論”。
text by
永田遼太郎Ryotaro Nagata
photograph byKyodo News
posted2018/02/19 08:00
ルーキーながら背負う番号は「4」。キャンプでは早くもホームランを打つなど、藤岡裕大にかける期待は大きい。
「4年間が無駄だったのかなと」
そんな藤岡に生田監督から「甘ったれるな!」と、檄が飛んだ。
「他の選手たちは落ちても、他の会社を受けに行くのに、お前はドラフトで指名されなかったからって野球までやめるのか!」
その言葉は痛いほど身に沁みたが、それでも気持ちの切り替えは容易ではなかった。
振り返れば東都大学野球のリーグ戦がまだ残っていた。やらなければいけないという想いと、簡単には切り替えることが出来ない葛藤で頭を悩ませた。
「なかなか気持ちは切り替えられなかったです。リーグ戦もまだ残っていて、チームの中心として出ていました。だから切り替えなければという想いはあったんですけど、やっぱり(プロになるのが)小さい頃からの夢でしたし、亜細亜大学に行ったのも、プロになりたくてなので……。今までやってきた4年間が無駄だったのかなとそのときは思いました」
大学の同級生も「本当に良かったな」。
すると、そんな藤岡を励まそうと1亜細亜大の部員106人全員が、全体練習終了後、定例となっているあいさつ練習の中で、最後に藤岡にエールを送った。
「フレー、フレー藤岡」
「フレー、フレー北村」
そのエールには同じくドラフトで指名漏れし、その後、トヨタ自動車でともにプレーする北村祥治の名も含まれていた。
「ドラフト翌日で、切り替えなければいけないと思っていたところでした。部員のみんなからサプライズがあって、そのときに“このチームで勝って終わりたい”と心の底から思って……。自分にとってはあれが立ち直らせてくれるきっかけでしたね。チームメイトの気遣いというか、そういうのも感じましたし、ああいうことがあったから大学の同級生も今回、ロッテに指名されて『本当に良かったな』ってメッセージを送ってくれましたし、ここまで頑張ってきて良かったなって思いましたね」
挫折があったから、人として成長できた。優しさを知ったから、人との接し方には人一倍のこだわりを見せる。質問に対してしっかりと考えてから話す姿勢、言葉の一つひとつの意思、力強さ。挫折を乗り越え、日々、自分と向き合ってきたからこそ、自然とできている。そう思えた。