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スマイルジャパン、3人娘の「原点」。
苫小牧東高で過ごした3年間の重み。
text by
神津伸子Nobuko Kozu
photograph byNobuko Kozu
posted2018/02/14 08:00
最終予選での米山知奈、大澤ちほ、鈴木世奈(左から)。まずは1勝を手にしてほしい。
大澤は男子と勘違いされることも。
当時を知る人は、3人娘についてこう語る。
「大澤さんは当時チーヤンと呼ばれていて、坊主頭でガタイもよくて、しばらく大澤クンだと思ってました(笑)。米山は良く笑って場を盛り上げる可愛い子で、鈴木はクールビューティー」
苫東の指導が認められ、山中はわずか1年で王子製紙監督に抜擢されている。当時のスタイルは「褒めて褒めて褒め倒して、選手をその気にさせる指導」だったという。
3人娘の高校卒業から、早8年間の時が流れる。
圧倒的なスピード、パワーとリーダーシップでスマイルジャパンを牽引する大澤は「あそこが私たちの原点。氷にほとんど乗れなかったけど、身体づくりも精神面も本当に田中先生の指導のおかげで頑張る事ができたのです。感謝の気持ちは言葉では表現し尽くせません」と言う。
「今の土台となる部分が苫東で築かれたのだと思う」という鈴木は、2年前、教育実習のために母校に戻った。保健体育の先生として「リンクの上とは違い、穏やかで優しい先生でした」(田中)。今やナショナルチームの守備の要だ。
可愛らしい表情とは裏腹に、氷の上では非常にアグレッシブなプレーをする米山は、攻めの中心の1人に成長。苫東について「絆を深めた大切な場所」と表現する。
今度は男子が氷上の3人に声援を送る。
「3人は成績もかなり上位で、大変優秀な生徒たちでした。本当に優れた選手は、勉強も優秀なのだと思います。大澤は高校時代からリーダーシップを発揮していました。彼女たちはみんな、学校生活では優しく明るい生徒たちでした」(田中)
今でも、男子部員も含めたLINEグループがあり、多くの同期が平昌五輪の応援に駆け付ける。五輪出場を決めた時も、祝勝会が開かれた。高校時代は氷を独占していた男子が、今度は立場が入れ替わって氷上の彼女たちに心から声援を送る。
苫東アイスホッケー部では当時、バレンタインデーに女子部員が手作りのチョコレートを男子部員に贈る風習があった。受け取ったチョコを嬉しそうに食べたり、持ち帰る男子部員。微笑ましい思い出の1つだ。