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スマイルジャパン、3人娘の「原点」。
苫小牧東高で過ごした3年間の重み。
posted2018/02/14 08:00
text by
神津伸子Nobuko Kozu
photograph by
Nobuko Kozu
スマイルジャパンの副将、米山知奈は走っていた。
高級ホテル「ザ・プリンスパークタワー東京」の地下宴会場近くの広い廊下を、真っ赤な薔薇がアレンジされた大きな花瓶の横を駆け抜けていく。
昨年12月、女子アイスホッケー日本代表メンバーが発表された日のことだ。会見時間の直前にそこにいるという事は、つまりそういう事だ。
「代表決定おめでとうございます」
迷わず声をかけると、「ありがとうございます!」。
満面の笑みが眩しく、透けるような白い肌が紅潮していた。一旦足を止めたが、また全力で走り去った。
なぜ走っていたのだろう。いつもインタビュー時に聞こうとしているのに、いつも忘れてしまう。
田中将大も走った広大な林の中を。
10代の3年間も、米山は走っていた。走っていたのは、北海道苫小牧市にある原生林。スマイルジャパンの主将・大澤ちほ、副将・鈴木世奈と一緒だった。高校時代をともにした3人は、代表チームの中核を担っている。
彼女たちが走っていた林は、ドジャースの田中将大が卒業した駒澤大学附属苫小牧高校(以下、駒大苫小牧)の北に位置する、2000haはあろうかという北海道大学の研究林である。東京ドーム何個分とか、そんな生易しい表現では言い表せない広大さだ。
マー君も走っていたその道のりを、苫小牧東高校(以下、苫東)の同級生だった3人娘は男子部員と一緒に走っていた。氷上練習がない日は、約14km走っていたという。
「間違いなく将来のオリンピック選手になる」と、鳴り物入りで苫東に入学して来た3人。
「意欲的に練習に取り組んでいて、男子に負けないぐらいスキルも高かった」と、懐かしそうに当時を振り返るのは、苫東アイスホッケー部の田中正靖監督だ。