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スマイルジャパン、3人娘の「原点」。
苫小牧東高で過ごした3年間の重み。
text by
神津伸子Nobuko Kozu
photograph byNobuko Kozu
posted2018/02/14 08:00
最終予選での米山知奈、大澤ちほ、鈴木世奈(左から)。まずは1勝を手にしてほしい。
氷上の練習は1日1時間半だけだった。
しかし高校時代、彼女たちが氷の上で練習した時間はわずかだった。
当時の男子アイスホッケー界で、インターハイは毎年のように駒大苫小牧が優勝していた。準優勝が定位置だった苫東の悲願は、打倒駒大苫小牧。
大澤の頃は、部員も男子30人女子8人の大所帯。インターハイ優勝を目指す男子の保護者から「人数が多過ぎるから、女子を氷から降ろして欲しい」と、今では考えられないような申し入れがあった。
女子に与えられた1日の氷上練習はわずか1時間半。部員急増により、田中は苦渋の選択をせざるをえなかった。
今でも田中のパソコンには、女子部員たちからの「何とか男子と一緒にやらせて欲しい」という、切実なメールが保存されている。決して消す事はできない。
なので、女子部員が林を走った距離は、おそらく男子のそれを上回る。
3人娘も山中監督も苫東にいた。
苫小牧市は製紙業の町として栄え、漁港も製造品出荷額は道内一を誇る。そして、国内屈指のアイスホッケータウン。アジアリーグで活躍する王子イーグルスの本拠地で、スマイルジャパンが毎月合宿する白鳥王子アイスアリーナ、ときわスケートセンター、ハイランドスポーツセンターなど多くのリンクが存在する。
米山らが在籍した苫小牧東高は文武両道の進学校で、卒業生にはノーベル化学賞の鈴木章氏、作家の馳星周氏らがいる。アイスホッケー関係では現パラアイスホッケー日本代表の信田憲司らが出身だ。アイスホッケー部はインターハイ優勝10回を誇る強豪だ。'79年には、校内リンクが完成している。
そんな田中の苫東赴任と同時に、3人娘は入学して来た。田中が赴任前1年間のアイスホッケー部コーチは、スマイルジャパンの山中武司監督、飯塚祐司コーチも同じ時期に数年苫東で指導している。現在の代表メンバーが、勢ぞろいしていたのだ。