プレミアリーグの時間BACK NUMBER
ビデオ判定にプレミアも賛否両論。
90分間で4回も中断されちゃ……。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byGetty Images
posted2018/01/22 11:30
ウィリアンのプレーを確認するレフリー。審判団の重圧を軽減する役割として、VARは存在してほしいものだ。
レスター戦のゴール判定は「歴史的な出来事」に。
その5日後、トライアル対象外のリーグ戦、ワトフォード対サウサンプトン戦。サウサンプトンは手で押し込まれたゴールでドローに持ち込まれた。勝ち点2を失う形になったマウリシオ・ペジェグリーノ監督を筆頭に、ビデオ判定導入を求める声が国内で強まった。
だが、その翌週のFAカップでは賛否両論が巻き起こった。16日のレスター対フリートウッドでは、イングランド史上初となるビデオ判定によるゴールが生まれた。レスターのケレチ・イヘアナチョの2ゴール目は、一度はオフサイドで無効の判定が下ったが、VARによって主審が判定を覆して有効に。メディアでは「歴史的な出来事」として判定の正当性も称えられた。
翌日、チェルシー対ノリッチでの試合前のこと。BBCの番組で司会を務めたガリー・リネカーは、イヘアナチョのシーンを振り返り、VARのハンドジェスチャーを、親指を立てて賛成の意を表していた。ところがチェルシー戦後には、ゲスト解説者のアラン・シアラーが「全く話にならない」とまで言ってVARを否定することになるのだ。
それは、ウィリアンがペナルティーエリア内のシミュレーションでイエローをもらった場面に端を発した。
シアラーとともに解説したディオン・ダブリン(元ノリッチ)とジャンフランコ・ゾラ(元チェルシー)、ジャーメイン・ジーナス(元トッテナム)も、リプレーを見ながら「明らかなPK」だと口をそろえた。しかしVAR審判の眼には判定ミスがあったとは映らず、そのままプレーは続いた。
主審が判断するVARには、人間味が残されている。
VARのファジーな面は、程度によっては歓迎できるのかもしれない。テクノロジー利用の先陣を切ったゴール判定システムには、判定までのタイムラグ、そして機械的な判定による味気なさを懸念する声が多かった。
サッカーでは判定をめぐる議論も1つの娯楽という認識がある。その点、映像確認担当と主審の判断に依存するVARには、人間味が残されている。
だからこそ余計に、審判には「自分が試合を裁く」という威厳と責任感を持って、VARと接してもらわなければならない。