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ユーベやナポリのオファーを蹴る!
セリエA、地方LOVEな男たち列伝。
posted2018/01/25 11:00
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph by
Getty Images
リーグ優勝を狙う首位クラブから移籍オファーが来た。
提示された内容は年俸3倍増、しかも長期の5年契約。こんなビッグチャンスは滅多にあるもんじゃない。
なのに、FWベルディ(ボローニャ)の返事は「NO」だった。
冬の移籍市場は今がたけなわだ。
悲願のスクデット獲得に向けてセリエA首位を走るナポリにしても、戦力補強は欠かせない。彼らが欲しいのは3トップの選手層を補完するサイドアタッカーだ。
残留を争う地方クラブにありながら気鋭の右ウイングとして今季すでに6ゴールを上げ、市場の評価も急上昇中のベルディに白羽の矢を立てたナポリは1月上旬、所属するボローニャへ移籍金2000万ユーロを提示した。ナポリの監督サッリも、エンポリ時代に2年間指導した元教え子に直接電話して説得を試みたが、ベルディの残留意思は固かった。
「ナポリからのオファーには正直心が動いたよ。ただし、浮かれ気分から頭を冷やしてよく考えた。シーズン途中の今、ここで実感している成長の流れを断ち切りたくなかった」
名手パオロ・ロッシからも残留の決断にお墨つき。
2シーズン前はエイバルでFW乾貴士とチームメイトだったベルディは、今季開幕から21日のベネベント戦まで21試合連続先発中。昨年イタリア代表デビューを果たした25歳は、まさにこれからがプレーヤーとして脂の乗ってくる時期だ。
今、ナポリに移籍すればスクデットも夢ではないが、スタメンで出られる保証は一切ない。それどころか、指揮官サッリが控え選手に与える起用機会は著しく少ないことで有名だ。有能なアタッカーであるはずのMFジャッケリーニの今季出場時間はたった61分しかない。
今から約40年前、やはりナポリからのオファーを断った名手パオロ・ロッシは地方クラブ出身の先達として「チャンスはまた来る。移籍のタイミングは今ではないと熟考したのだろう」とベルディの決断に理解を示した。