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決勝で1点差、極限の緊張感の中で。
帝京と明治が見せたラグビーの真髄。 

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大友信彦

大友信彦Nobuhiko Otomo

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photograph byNobuhiko Otomo

posted2018/01/13 11:30

決勝で1点差、極限の緊張感の中で。帝京と明治が見せたラグビーの真髄。<Number Web> photograph by Nobuhiko Otomo

帝京大の9連覇。その事実だけでは語れない80分間の激闘が秩父宮にはあった。

桐蔭学園で同級生だった堀越と古川のリスペクト。

 メディアというものが要らないのでは、と思ってしまうほどの表現だった。選手同士が総括して、魅力的な言葉で伝えてくれるからだ。会見で同席していた明大の丹羽政彦監督もこう言っている。

「古川の話を聞いていて、ウチのチームも大人になったなと感じました」

 それは帝京大・岩出雅之監督にも共通した感覚だったようだ。会見の中で「今シーズン、最も成長した選手は?」と聞かれると、こう返していた。

「堀越キャプテンが一番成長したと思います。会見でのマイクの声もはっきり、しっかりした声ですし。こういう席だけじゃなく、ふだんの生活の中でもキャプテンシーを感じる。良いキャプテンを、今年の帝京は与えていただいたなと思っています」

 堀越と古川は、神奈川の桐蔭学園で同級生だった。対抗戦の対戦を控えた週にそれぞれがプライベートで出かけた高尾山でばったり出くわし、驚き、何とも気まずい思いをしたという秘話もある。フロントローとは思えないほどボールを持つ堀越と、ボールをほとんど持つことなく体をぶつけ、ハードワークを重ねる古川。プレースタイルは対照的にも見えるが、深いところで通じ合っているのだろう。堀越は、決勝を控えた日、古川について聞かれ、こう答えた。

「愚直というんですか、痛いところにアタマを突っ込むし、走るし、自分の出来ることを精一杯やるプレーヤーなので、怖さがあります。波のないプレーヤーなので、そこをしっかり潰していきたい」

 戦う相手へのリスペクトに溢れた言葉の中に、容赦ない闘志も矛盾なく存在する。そんなリーダーがいるからこそ、あの素晴らしい決勝が生まれたのだろう。

「10連覇へのスタート台に立てたと思います」

 さて気が早いが、来季は帝京大が「10連覇」という節目の大記録に挑むシーズンとなる。

「僕らの学年は4年のシーズンに10連覇を達成して卒業します」

 帝京大入学時からそう公言していたのが、3年生のWTB竹山晃暉だ。

「9連覇を達成したと同時に、10連覇へのスタート台に立てたと思います」

 優勝後のミックスゾーンでそう言った竹山は、神妙な顔で続けた。

「徹底的に自分の悪いところを直したい。隙のないチームを作るために、チームのことよりもまず自分自身が最上級生に相応しい人間にならないと」

【次ページ】 「年ごとに連覇の重み、難しさを感じている」

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