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森岡隆三監督が体感したJ3の実態。
限られる予算とバス移動10時間。 

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寺野典子

寺野典子Noriko Terano

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photograph byJ.LEAGUE PHOTOS

posted2018/01/04 17:00

森岡隆三監督が体感したJ3の実態。限られる予算とバス移動10時間。<Number Web> photograph by J.LEAGUE PHOTOS

森岡隆三にとって初のトップチーム経験は苦いシーズンとなった。しかし鳥取での戦いはまだ続く。

ピッチの上のことだけ考えていては回らない。

――森岡監督が直面しているのは、地方のJ3リーグ共通の課題かもしれませんね。

「地方自治体、行政との関係も重要になってくると思います。クラブとしての経営を考えたときに、トップチームありきじゃない経営というのも考えられると思うんです。クラブという会社基盤のなかにいくつかの事業があり、そのなかのひとつがサッカー、トップチームという形でもいいと思うんです。育成やスクールというサッカー関連以外にもできる事業があるんじゃないかと。

 僕らは身体を使って商売しているのだから、健康産業というか、お年寄りへ向けたアプローチができるかもしれない。サッカー文化を根付かせたい、サッカーで地元を一緒にわっしょいわっしょいと盛り上げたいからこそ、まずはガイナーレを浸透させなくちゃいけないと思っています」

――本来、監督というのはピッチやロッカールームのことだけを考えれば良いわけですよね。だからこそ、「勝利」によって、地域を盛り上げようとする。しかし、今の森岡監督は、ピッチ以外の部分でも尽力したいと考えているのでしょうか?

「1+1を4や5にするためには全員守備、全員攻撃が肝心です。1人でいくつもの役割を担わなくちゃいけないのは、ピッチ上もピッチ外も同じです。塚野さん(代表取締役社長)や岡野(雅行)さん(代表取締役GM)は本当に目のまわるほどの忙しさで全国を飛び回り、営業してくれています。強化部をはじめ、フロントスタッフ同じ。全員が頭の下がるほどに動き回ってくれています。僕の仕事はもちろん『現場』が命ですが、クラブの力になれることがあれば、何でもやりたいと思いますし、アイディアも出したいと思っています。

 今シーズンは非公開練習をしたことは一度もありません。むしろSNSを活用して練習メニューや予想先発メンバー、ミーティングだって公開するのも面白いんじゃないかと思います。もちろん、許容範囲はありますが(笑)。ただ試合という発表会はもちろんですけれど、そこを楽しんでもらうためには、勝敗だけでなくそのプロセスを見てもらったほうがサッカーの面白さを味わってもらえると思うんです」

――そして、森岡監督がピッチで選手に求めていることは?

「とにかくプレーをすること。『100%プレーする』『瞬間もプレーする』『最後までプレーする』というのが大前提です。それができる環境を僕が作っていくのが、もっとも重要な僕の仕事だと感じています」

 現実には、森岡監督がJリーグの指揮官として過ごした最初のシーズンは、最下位という結果となってしまった。それは監督としてJ3、鳥取というまったく未知の環境への対応に時間がかかったことも原因のひとつかもしれない。その責任を引き受けながらも、森岡監督のチャレンジ精神が衰えることはない。

「誰もが難しいという場所で何かを成し遂げられたら、得られるものは非常に大きいと思っています。サッカーに関わる人間として、この鳥取にサッカー熱を灯すこと。『強小』という挑戦のやりがいもまた大きいと感じています」

 成績は残せなかったけれど、クラブスタッフや選手たちが奮闘している事実に疑いはない。だからこそ、森岡はこの地にサッカーを根付かせることを諦めない。

【次ページ】 放映権料は上がっても、J3の分配金はわずか。

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