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ペトロヴィッチ式は札幌に合う?
浦和での5年半に見る魅力と危うさ。
text by
塚越始Hajime Tsukakoshi
photograph byGetty Images/J.LEAGUE
posted2018/01/02 08:00
解任されたとはいえ、浦和で一定の評価を得たミシャ。北の大地で魅惑のスタイルを作り上げられるか。
最終ラインがどんどんポゼッション重視に。
また、ミシャが浦和再建のためにメスを入れたのが最終ラインだった。ここにも、ミシャの哲学が垣間見える。
「アタッカーが敵陣の危険なエリアで仕事をできていない原因を突き詰めると、辿り着くのが最終ライン。後ろからの組み立てができていなかった。ボールポゼッションを高めるには、後方の選手の役割がとても重要だ。攻撃的な選手が気を利かせて下がってボールを受けても、前に人数を割けなくなるだけで、チームにとってプラスとは言えない」
3バックへの変更に伴い、宇賀神友弥が左サイドバックからウイングバックに回った。それに加えて、2011年から最終ラインのメンバーは総入れ替えした。その後も、槙野智章、永田充→那須大亮→遠藤航、坪井慶介→森脇良太と、シーズンを重ねるごとにポゼッション重視の顔ぶれが揃っていった。
1対1の仕掛けがポイントになるウイングバックには、梅崎司、関根貴大、駒井善成、宇賀神、高木俊幸らを起用した。体力の消耗がもっとも激しいポジションとあって、調子の良い選手が起用された。近年は宇賀神と関根が主力を務めていたが、絶対的な存在ではなかった。それだけに関根退団によってピースが1つ欠けることになり、低迷の原因の1つになった。
浦和では主力とサブ組への信頼度に決定的な差が。
関根以外の若手が主力に食い込めなかったのは事実だ。ミシャ側で見ても結果を求めるあまり、若手に実戦経験を積ませながら育てるという選択ができなかった。
実際、カップ戦で選手を総入れ替えし、結果を残せなかったサブ組にダメ出しするという、少々手荒いテストも何度かしていた。ミシャ退任後に日本代表に選ばれた長澤和輝だが、シーズン開幕時に負傷した影響もあり、在任時は主力に食い込めなかった。
例えば2015年、ACLグループステージ第5節の水原三星戦である。直前のリーグ戦から先発8人を入れ替えて臨んだが、1-2で敗戦。1試合残してグループステージ敗退が決まった。
この時ミシャは「試合後であれば、誰でも理由は見つけられる。私はこの11人でいけると自信を持って送り出した。良い結果は残せなかったが、彼らを信じる気持ちは変わらない」と選手たちをかばった。
一方、主力組はリーグ戦では安定した戦いを続け、史上初の無敗でのステージ優勝を果たした。「信じる」なかでも、主力とサブ組への信頼度に決定的な差が生まれてしまったエピソードに挙げられる。