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ペトロヴィッチ式は札幌に合う?
浦和での5年半に見る魅力と危うさ。
text by
塚越始Hajime Tsukakoshi
photograph byGetty Images/J.LEAGUE
posted2018/01/02 08:00
解任されたとはいえ、浦和で一定の評価を得たミシャ。北の大地で魅惑のスタイルを作り上げられるか。
興梠に「サッカーは楽しいよね」と言わせた充実感。
興梠は2014年終盤に腓骨骨折し、チームはリーグ優勝を逃した。そして翌年キャンプの練習試合で約3カ月ぶりに実戦復帰を果たすと、ミシャとコンディションを念入りに確認しながら時間限定でプレーし、ゴールも奪ってみせた。味方の良さを引き出し、自身の良さも引き出してもらう。その相乗効果によって、コンビネーションサッカーは威力を発揮した。
「レッズは目立ちたがり屋が多いでしょ。だからその良さを引き出していきたい。自分にはこのサッカーが、このチームが、とても合っている」
そう語っていた興梠は、久々にチームメイトと汗を流したあとに印象的な言葉を残した。
「やっぱり、サッカーは楽しいよね(笑)」
運動量を生かしてパス&ゴーで味方選手を追い越し、数的優位を作り出す。もしかすると札幌でこそ、その戦術が昇華されるのかもしれない。
広島ではパスとポゼッションにこだわるスタイルを示した。浦和ではドリブルと前線からのプレッシャーを織り交ぜた、より攻撃的スタイルに仕上げた。ただ浦和ではバランスを失い最終的に瓦解したのは、冒頭で記した通りだ。
勇敢な心を刺激して、さらなる魅力を見せるか。
では新たに札幌では、どのようなサッカーを展開するのか――。
多くの若手の勇敢な心を刺激すれば、大きな重圧を受けていた浦和以上にダイナミックなサッカーを展開できるかもしれない。
もちろん札幌が勝たなくていい、というわけではない。勝利が前提ではなく、走り切る先に勝利がある。ミシャスタイルの原点でもある、90分間ダイナミックかつ爆発的に走り切るスタイルを見せたら、J1のどのクラブも対応に苦労しそうだ。
そう思わせてまったく予想と異なるスタイルにしてくることもあるか?
ミシャのあらゆる人を包み込んでしまう包容力も、北海道のスケールに合っている。
W杯イヤーでもある2018年、北の大地からJリーグを熱く盛り上げるたくさんの話題が届きそうだ。