スペインサッカー、美学と不条理BACK NUMBER
レアルを倒した10万人の町クラブ。
ジローナとグアルディオラ弟の野心。
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph byAFLO
posted2018/01/01 11:30
乾にこそ2ゴールを叩き込まれたが、レアル相手の勝利などジローナはラ・リーガで存在感を見せている。
「より成熟し、強固な組織を持つクラブとなった」
これらの経験を経て迎えたマチン体制4年目の昨季、ジローナは昇格の有力候補としてシーズンをスタートし、前評判に違わぬ安定した戦いぶりで3度目の正直となる昇格を決めた。
奇しくも自動昇格枠の2位以内が決まった第41節の相手は、2年前に悲劇を味わった時と同じサラゴサだった。試合終了の瞬間を「安堵感に満たされた」と振り返ったマチンは、直後の会見で感慨深げにこう話していた。
「我々は今、より成熟し、強固な組織を持つクラブとなった。1部で戦うための準備は整っている」
彼の言う通り、1部昇格に手をかけた過去2シーズンもオーナー変更に会長、強化責任者の相次ぐ交代があっただけに、もし1、2年早く1部に昇格していたら今季ほどの躍進は望めなかったかもしれない。
現時点ではレアルに“勝ったことしかない”。
実際、満を持して臨んだ今季は強豪アトレティコ・マドリーと2-2で引き分けた開幕戦を皮切りに、資金力や選手の質でははるかに上回るライバルに対しても互角の戦いを繰り広げている。
10月29日の第10節には、ホームでレアル・マドリーを破るジャイアントキリングも実現した。現時点だけの話ながら、1部でレアル・マドリーに“勝ったことしかない”クラブは恐らくジローナだけだろう。
昨季までは3-4-1-2、今季は3-4-2-1を基本システムとして戦い、守っては高い位置からアグレッシブにプレスをかけてライバルに主導権を与えず、攻めてはサイドからのクロスやトップへの縦パスを多用する。190cm超の長身CBを生かしたセットプレーも大きな武器で、これまで全21ゴールのうち8ゴールを生み出している。
GKのボノ、CBのフアンペ、ドブレピボーテのグラネルとペレ・ポンス、左ウイングバックのモヒカ、2シャドーのポルトゥとボルハ・ガルシア。昨夏には14人の新戦力を補強したものの、先発の半数以上は昨季から変わっていない。それは指揮官が志向する、オートマティズムを重視したフットボールと無関係ではない。