スペインサッカー、美学と不条理BACK NUMBER
レアルを倒した10万人の町クラブ。
ジローナとグアルディオラ弟の野心。
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph byAFLO
posted2018/01/01 11:30
乾にこそ2ゴールを叩き込まれたが、レアル相手の勝利などジローナはラ・リーガで存在感を見せている。
会長を務めるグアルディオラの弟も手応え十分。
チーム全体で明確なプレーイメージを共有し、選手個々が迷いなく100%のインテンシティーで戦えること。それがジローナの最大の強みである。
そのためにマチンはセットプレーを含め、パターン化されたコンビネーションプレーを繰り返し練習で落とし込むことで、攻守に連動性の高いフットボールを実現している。新加入の選手たちが先発争いで遅れをとっているのは、まだ既存選手ほどオートマティズムを消化できていないからなのだろう。
年内最終戦では乾貴士が2ゴールを決めたエイバルに完敗したものの、17節を終えての勝ち点23は上々の出来である。
12月22日に行われた株主総会では、今季の予算が4310万ユーロで可決された。昨季の予算が900万ユーロだったことを考えれば、大きな飛躍である。
この総会には今年8月にクラブの共同オーナーとなったシティ・フットボール・グループとジローナ・フットボール・グループの両代表、フェラン・ソリアーノとペレ・グアルディオラも出席した。
「クラブは地に足をつけながら、然るべきスピードで前進している。よく戦っているチームのことを誇らしく思うが、まだ残留を決めるまでには長い道のりが残っている」
そう話したのは選手、クラブの仲介人としてスペインフットボール界を陰で動かしてきたペップ・グアルディオラの弟だ。
「カタルーニャ第2のクラブとなることも可能だろう」
一方、バルセロナ時代にジョアン・ラポルタの右腕を務めたソリアーノは、野心を隠そうとしなかった。
「我々はこの数ヶ月のうちに、ジローナとカタルーニャ全土で人々の愛情を勝ち取ってきた。当然ながら、カタルーニャ第2のクラブとなることも可能だろう」
目指すはカタルーニャ第2のクラブ。フットボール界有数の後ろ盾がついただけに、それも不可能な話ではなさそうだ。実際、既にチームはエスパニョールとの直接対決を制し、順位表でも上位につけている。
とはいえ、それはまだ先の話だ。今季の目標はあくまでも1部残留。そのことを自覚している選手たちは、町クラブらしい謙虚さとハードワークを武器に、夢の舞台を楽しみながら戦っている。