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「東洋の神秘」グレート・カブキ引退。
ペイントと赤と緑の毒霧が綴る伝説。
posted2017/12/21 10:30
text by
原悦生Essei Hara
photograph by
Essei Hara
「東洋の神秘」ザ・グレート・カブキが12月22日、後楽園ホールで引退する。
高千穂明久(米良明久)は1948年日本生まれだが、ザ・グレート・カブキは1981年にアメリカで誕生した。
このカブキがブレークしなければ、その「息子」であるザ・グレート・ムタ(武藤敬司)も現れなかっただろう。
あの「鉄の爪」フリッツ・フォン・エリックが興行を牛耳っていたテキサス・ダラス時代。ある日、マネジャー役のゲーリー・ハートは日本の歌舞伎役者の写真を高千穂に見せて、質問をしてきたという。
「これはいったいどういうマスクを被っているんだ?」
ハートはハデな歌舞伎の隈取をマスクだと思ったようだ。
何も知らないハートのちょっとした誤解に高千穂は「いや、違うんだよ」と笑ってしまったそうだが、こんなやり取りの後に、ザ・グレート・カブキは誕生したのだという。
UNヘビー級王者のまま日本プロレスが崩壊。
高千穂は1973年、力道山時代から日本におけるプロレス王国を誇ってきた日本プロレスにあって、UNヘビー級王者のまま団体崩壊に直面することとなった。
その後は、全日本プロレスに移籍の形をとった。
しっかりとレスリングのできるレスラーであることは誰もが認めていたが、スタイルが地味であることは否めなかった。
そんな居心地の悪さもあってか、高千穂はアメリカに渡って、試合を続けることになった。
そして、先のエピソードにより生まれた「ペインティング」という手段でカブキに変身し、東洋色を全面に押し出したことによって大ブレークを果たしたのだ。