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「東洋の神秘」グレート・カブキ引退。
ペイントと赤と緑の毒霧が綴る伝説。
text by
原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2017/12/21 10:30
額の傷から鮮血が噴き出る……カブキとムタの戦いは、忘れられない死闘となった。
カブキvs.ムタ、忘れられない血まみれの死闘。
その後……1993年にWARと新日本プロレスのリングで行われた、この「息子」との親子対決は凄惨を極めた。
カブキvs.ムタ――毒霧とおびただしい血、それは地獄絵図のようなおどろおどろしい世界だった。
カブキは自らの額からほとばしる血を両手で受け止めると、その血をムタにフーッと吹きかけた。
あまりの凄惨さと残忍さに、この試合をテレビで放送する予定だったテレビ朝日のプロレス番組「ワールドプロレスリング」は泣く泣く放送を見送ったほどだ。
1998年、第一線から退くことにはしたが……。
SWSやWARに所属していた時代は天龍源一郎の参謀役であり、若手レスラーの育成係だった。若いレスラーは道場で、カブキからレスリングのテクニックと共に「間」や「呼吸」というプロレスに大切なものを学んだのだ。
カブキの教え方は、実に理にかなったものだった。
そして1998年。「息子」のムタには「I miss you my father……」(いなくなると寂しいよ)と声をかけられたが、カブキは第一線から退くことにした。
その後は請われた時だけのスポット参戦を続けて、今に至る。