プロレス写真記者の眼BACK NUMBER
「東洋の神秘」グレート・カブキ引退。
ペイントと赤と緑の毒霧が綴る伝説。
text by
原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2017/12/21 10:30
額の傷から鮮血が噴き出る……カブキとムタの戦いは、忘れられない死闘となった。
普段プロレスを扱わない一般紙までが報じた日本凱旋。
カブキの日本凱旋当時、普段プロレスを扱わなかった朝刊スポーツ紙でも記事が組まれた。
ジャンルとしては怪奇レスラーに属するわけだが、カブキという名前が世間的にはよかったようだ。少年マンガ誌やテレビでもしっかり話題になっていった。
そのおかげもあって、招聘したジャイアント馬場率いる全日本プロレスのシリーズも、カブキ人気で盛況となった。
大人気となったカブキは、NWA王者リック・フレアーとも世界戦を戦うことになる。さらには、三沢光晴のタイガーマスクとも戦った。
「My Son……」のセリフが原因で、家庭は大騒動。
アメリカでのWCW時代、ひとつ困ったことが起きた。
新日本プロレスからアメリカ武者修行にやって来た武藤敬司がザ・グレート・ムタになった時、カブキがムタに「My son……」と語りかけるシーンがあったのだ。
試合が終わって家に戻ると雰囲気がいつもと違う。奥さんがすごく怒っていたという。
カブキが知らぬ間にカブキ家では「隠し子騒動」が巻き起こっていたのだ。
全米にテレビ中継されていた、この父子の再会シーンを見ていた奥さんが「何、パパ! 大きな子がいたのね。隠して黙っていたわけ!(怒)」ということになったらしい。
直接カブキ本人から聞いた話だが、あまりにも出来過ぎた話なので、その場で本人に何度も念を押してみたくらいだ。
「いや、本当ですよ。説明するのが大変だったんですから。こっちは冷や汗ものでしたよ」と言って、カブキは笑っていた。