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W杯予選を通った監督が辞任・解任。
ハリルも経験した悲劇が今回も続出。 

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井川洋一

井川洋一Yoichi Igawa

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posted2017/12/14 11:30

W杯予選を通った監督が辞任・解任。ハリルも経験した悲劇が今回も続出。<Number Web> photograph by Getty Images

オーストラリア代表監督の座を追われたポステコグルー氏。J1横浜F・マリノスの監督候補にも挙げられている。

王族が深く関与するサウジアラビアの闇。

 しかしながら同協会に「明確なプランはなく」(ノバク記者)、それからひと月が過ぎても暫定監督のムラデン・クルスタイッチがその座に就いている。ムスリンのアシスタントを務めていた彼にトップレベルの監督歴はないが、初陣となった中国との親善試合でミリンコビッチ・サビッチを起用して勝利。「このままロシアでも、クルスタイッチが指揮を執る可能性が出てきた。場当たり的ではあるが、本番での結果がどうなるかは誰にもわからない」とノバク記者は言う。

 一方、予選突破を決めた後に、指揮官自ら職務を続行しないと決めたケースは2件ある。どちらもアジアの代表チームだ。

 サウジアラビアを3大会ぶりに本戦に導いたベルト・ファンマルバイク監督は、予選終了時までの契約を更新しなかった。理由はサウジアラビアへの移住を強要されたからだと伝えられている。さらに後任のエドゥアルド・バウサ──UAEを本大会に導けなかったアルゼンチン人監督だ──も、11月の親善試合の2試合に敗れて解任され、その後、こちらもチリで突破に失敗したフアン・アントニオ・ピッツィが招聘されている。

 王族が深く関与する同国協会は以前から代表監督の首を頻繁にすげ替えてきた歴史を持つが、この時期の激しい動きは迷走と表現すべきものだろう。

つなぐスタイルを標榜したポステコグルーも辞任。

 オーストラリアはホンジュラスとの大陸間プレーオフを経て、やっとの思いでロシアへの切符をつかんだ。ファンは歓喜に沸いたはずだが、直後に指揮官のアンジェ・ポステコグルーは辞任を表明。2013年10月に就任してから、ショートパスをつなぐスタイルでサッカールーズ(豪州代表の愛称)に「革命」を起こそうとしてきたが、この4年間には大きな浮き沈みを経験した。

 特に今予選では結果が伴わず、かつてのフィジカルを活かす戦術へ舵を切り直すべきだと主張する一部のメディアや協会幹部との関係が悪化。辞任会見では憔悴した表情で次のように語っている。

「2014年W杯出場、2015年アジアカップ優勝、そして今回の予選突破。自国の代表チームを率いて、これほどの成果を有言実行でき、光栄に思っている。しかしながらその間に、私はひとりの人間、そしてプロフェッショナルとして、擦り切れてしまった。悲しいけれど、この冒険を終わらせなければならない」

【次ページ】 7年前、ハリルを解任したコートジボワールは……。

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