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フィギュアロシア勢、五輪への思い。
「国旗ではなく自分が出場すること」
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAFLO
posted2017/12/12 11:30
エキジビションでアリーナ・ザギトワ(一番右)とミハエル・コリヤダ(右から2番目)は明るい表情を見せた。
五輪に出たい気持ちは、女子2人も変わらないはず。
4位のセルゲイ・ボロノフはこのように語った。
「IOCの決定は残念ですが、自分は前回のソチ五輪も出ていません。まずはロシア選手権を勝ち抜いて代表になる権利を取り、オリンピックに行きたいです」
コリヤダ同様にNHK杯でGPシリーズ初優勝を遂げたが、その重みはコリヤダ以上かもしれない。GPシリーズに参戦して実に12シーズン目でかなえた初めての優勝だからだ。GPファイナルは3シーズンぶり2度目の出場、NHK杯では自己ベストも更新と、キャリア最高と言ってもよい結果を残している。30歳であることを考えても、素晴らしいシーズンだと言えるだろう。
年齢もキャリアも異なる2人だが、共通するのは今までオリンピックに出たことがないこと、そして平昌五輪シーズンを迎えて、上昇基調にあるということだ。なおさら、オリンピックへの思いは強くもなる。言葉が、真剣な表情がそう感じさせた。
その思いは、直接答えることのなかった2人の女子も変わらないのではないか。さらに今大会を欠場したエフゲニア・メドベデワら他の選手もまた、オリンピックを胸に取り組んできた。
「全面禁止」を主張する声もあったが……。
ロシアが組織的にドーピングを行っていたことは、これまでに出てきた数々の証拠からして疑いようがない。それをロシアが一切認めず否定している以上、IOCが処分なしで済ませるわけにはいかない。他競技の選手から「もっと公平に戦いたい」と聞いたことがある。もっともだ。
一方で、ロシアにドーピングをしていない選手がいるであろうことも、現時点では十分推測できる。そうした選手たちを、どうするかというところに焦点があった。全選手が排除されてしまったら、ドーピングをしたことのない選手にはこれ以上の不幸はない。
とはいえ「全面禁止」を推す声もなかったわけではない。
「選手やコーチが声をあげて、自ら変えていければこうはならなかった」という主張だ。
その主張もわからないではないが、さすがにそれは酷に過ぎるように思える。会社をはじめさまざまな団体で、それが小さな組織であっても、内部にいながら上層部に問題点を意見・指摘することがどれだけ難しいかを想像すればいい。ましてやロシアである。