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俊輔が磐田で過ごした最高の1年間。
「名波さんはすごく勉強になった」
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2017/12/05 11:00
中村俊輔のジュビロ移籍は、周囲の想像以上の成功を納めた。手探りの時期を越え、次は何を見せてくれるのだろうか。
キックミスに見えても、意地で蹴り続けたCK。
たとえば、コーナーキックの場面では、「自分のボールを知ってもらいたい」からとショートコーナーを選択しなかったこともある。最終節でもその試みは継続している。
「今日のコーナーキックでも、俺は(金崎)夢生の頭あたりを狙って蹴った。その前で競ればチャンスになると思ったから。でも、そこへ突っ込んでくる選手がいなくて、夢生に何度もはじかれていた。外から見たらキックミスに見えるかもしれないけれど、意地になってやるべきときも必要。数カ月後にはピッタリ合うようになるから」
たとえば、両グループに参加できるフリーマンを務めることが多かったミニゲームでは「両方の選手がアグレッシブにプレーできるよう考えた」という。
「名波さんの目的や意図を自分が消化するためだけじゃなく、チームとしてそれができるように工夫しなくちゃいけない。シュートじゃなくてパスを選択したり。そういう作業は面白かった」
後輩たちの力を引き出すための助言は惜しまない。
たとえば、途中出場の選手を真ん中でプレーさせることもある。
「鳥栖戦(11月26日)で残り10分くらいで入ってきた(松本)昌也は、最初は右だった。でも真ん中でアグレッシブにルーズボールを拾ったり、思いっきり気持ちよくプレーできるほうがあいつの良さがたくさん出ると思ったから、俺は右のままでプレーした」
チームメイトの成長を促す作業は、日本人選手だけにとどまらない。今季の磐田の成績に大きく貢献したと中村がいつも口にするアダイウトンについても、さまざまな提案をし続けている。
「いったん、自分のポジションへ戻れといつも言っている。こつこつ自分の家へ戻ってから出ていったほうが絶対にいいからね」
もちろん、こういう作業は横浜時代にも行っていたことだろう。しかし、監督との信頼関係がなければ、中村の行動も効果を生まない。両者が認め合っているからこそ、磐田の選手たちは中村の助言やプレーによって、成長し、チームに好影響が生まれたのだ。