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日本フィギュア支える名デザイナー。
宇野昌磨の衣装、ある秘密とは。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byTakaomi Matsubara
posted2017/11/22 08:00
衣装のデザインを手掛ける伊藤氏。選手のしなやかな動きを表現すると同時に、観客の眼を魅了する装飾を凝らしている。
「真央さんを観て勉強しようと思ったので」
トゥーランドットは北京を舞台にした物語だ。
「中国でもゴールドは特別な色なので、ちょうどよかったです」
そこに、運命的なものを感じた。それは今シーズンだけではなかった。
「私は浅田真央さんの『ラヴェンダーの咲く庭で』を観てフィギュアスケートを勉強しようと思ったので、昨シーズンも宇野さんのショートがラヴェンダーと聞いたとき“おおーっ”と、やはり運命的なものを感じました」
デザインは、次のように発想した。
「『誰も寝てはならぬ』のパートがやはりメインですので、歌詞のイメージでデザインを考えましたが、特に夜明けがキーポイントだと思いました。姫は夜明け前になんとか答えを探そうとしていて、カラフは勝利を確信しているので早く夜が明けて欲しいと願っています」
王子というより皇帝のイメージで製作した。
そこから導かれたのが「夜明け前に、姫のいる城を見つめているカラフ」。空は星がいっぱいで綺麗なイメージを思い描いた。装飾や全体は王子というより皇帝のイメージで製作していたと言う。
「圧倒される雰囲気を出したいなと思いました」
3枚描いて送り、選ばれたのは「本命」と考えていたデザイン。そこから製作は進められた。
「基本的に宇野さんは立っているだけ。まわりをお母さんと樋口(美穂子)先生と私で囲って、『ここはこうじゃない?』みたいなことを言って作業しています。宇野さん自身は、機能性、動きやすさは気にしますが、それ以外は特に言いません」