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日本フィギュア支える名デザイナー。
宇野昌磨の衣装、ある秘密とは。
posted2017/11/22 08:00
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Takaomi Matsubara
「運命的なものを感じましたね」
フィギュアスケートの衣装のデザイン・製作を担うデザイナーの伊藤聡美は笑顔で、ふと口にする。宇野昌磨の衣装を語る中での言葉だった。
フィギュアスケートでは、衣装が選手たちの演技を支える重要な役割を果たしている。選手の個性や曲、振り付けと高いレベルで融合すれば、その分、プログラムは映える。
この数年、注目を集めてきたのが伊藤である。今シーズンは羽生結弦、三原舞依、樋口新葉、本田真凜、白岩優奈らを一手に引き受ける。さらに宮原知子の場合は宮原自身がデザインし、その製作を請け負った。
最初に決まったのは「トゥーランドット」の衣装。
宇野昌磨もデザイン・製作を担った選手の1人だ。昨シーズンに続いて、今シーズンもショートプログラム『ビバルディ「四季」より「冬」』、フリー『トゥーランドット』双方を手がけた。
「最初に決まったのは、フリーの『トゥーランドット』です。依頼が来たのは、とても早かったですね。今年の1月にはお話がありました。選手たちの中でいちばん早かったです。デザイン画を提案したのも、(今年3月末に開幕した)世界選手権の前でした」
『トゥーランドット』は、絶妙なタイミングでの依頼であり、また選曲でもあった。伊藤は年始にイタリアのローマを旅行した。いろいろな教会をまわる中で、青の柱にゴールドの装飾の教会があった。
「こんな色を衣装に使いたいな」
そう思った。宇野から衣装の依頼があったのは、帰国して間もない頃だ。それが『トゥーランドット』だった。
「聞いた瞬間、絶対にあの青とゴールドにしようと思いました」