オリンピックへの道BACK NUMBER
日本フィギュア支える名デザイナー。
宇野昌磨の衣装、ある秘密とは。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byTakaomi Matsubara
posted2017/11/22 08:00
衣装のデザインを手掛ける伊藤氏。選手のしなやかな動きを表現すると同時に、観客の眼を魅了する装飾を凝らしている。
完成時の時になかった襟の切り込み。
デザイン面にはこだわらないが、動きやすさにはこだわる宇野ならではの、衣装の秘密がある。例えば襟のところに切り込みがある。完成時にはなかったものだ。
「ロンバルディア杯のときに切ったそうです。仮縫いやショーのときは気にならなかったみたいですが、試合の緊張感などで気になったみたいです」
ハサミを入れたのは宇野自身だった。
「てっきり、樋口先生が切ったと思っていたので、自分で切ったと聞いてびっくりしました。衣装を切るのは度胸がいると思いますし、うかつに切ると装飾が外れてしまうんです。でも、きちんと装飾が外れない絶妙なところを切っていて、『意外と簡単に切れました』とコメントをいただきました(笑)。
衣装を切ったことについて、私はまったく嫌な気持ちになりませんでしたし、むしろ申し訳なかったなと思います。機能面を考えてあげることも私の仕事ですので、パフォーマンスの邪魔にならないよう、より一層考えなくてはいけないと思いました」
来年2月には平昌五輪が控える。来るべきオリンピックへ向けて、こう願っている。
「アスリートなので順位や記録も大事かもしれないけれど、観ているほうからしたら、やっぱり、今その瞬間にしかできないプログラムを観たいというところがあります。そういう期待をしたくなる。『トゥーランドット』はすごい演技ができるんじゃないかと思うんです。オリンピックでそれを観たいですね」
心を、魂を込めて創り上げた衣装とともに選手が大舞台で喝采を浴びる日を、心待ちにしている。