スポーツ・インテリジェンス原論BACK NUMBER
今季の箱根は3強体制になるのか。
全日本を制した神奈川大の本音は?
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byKyodo News
posted2017/11/06 11:40
青学、東海大の2強かと思われた今年の駅伝シーズンに、神奈川大が名乗りをあげた。箱根もデッドヒートになりそうだ。
「1990年代は、走りこめば優勝までたどり着けた」
しかし21世紀に入って、神奈川大は苦戦を強いられる。まず、リクルーティングで後手を踏まざるを得なかった。その頃から、明治、青山学院といったいわゆる「ブランド校」が本格的な強化に乗り出し、選手たちの流れが変わった。神奈川大は2004年の8位を最後に、シード圏外へと転落していった。大後監督は振り返る。
「1990年代は、まだシンプルでした。それほど強化に乗り出している学校も多くなかったので、しっかりと走り込めば優勝までたどり着けたんです。でも、落ちていくのはアッという間でしたし、今は這い上がってくるのが大変で」
ついに、2010年には予選落ちした。どん底である。しかし、この事件があったからこそ、V字回復が可能になった。
「あそこが分岐点でした。予選落ちした時点で、他の大学だったら、私は指導者として脇に退かざるを得なかったかもしれません。でも、神奈川大は懐が深くて、学生長距離界がどんな競争をしているのか、耳を傾けてくれた上に、強化を根本から見直すことが出来たんです」
走りの効率を追求し、年末はレギュラー以外帰省。
そこから強化体制が変わった。練習環境でいえば、クロスカントリーのコースが整備され、大後監督自身も指導方針をアップデート、いや、モデルチェンジをした。
「今は、『走りの技術』を重視するようになりました。効率のいい走り方を追求するようになって、選手たちは明らかに変わりました」
最近は大後監督から、「コンディショニング」という言葉を頻繁に聞くようになった。
昨年はまだ市販されていなかった栄養補給食品「ボディメンテ」をレギュラークラスの選手たちに与え、最高のコンディションで箱根駅伝を迎えられるようにしたり、年末は箱根のメンバーから漏れた選手たちを一旦、帰省させもした。
「大学によっては、感染症の予防でレギュラー以外の選手は帰省させることがあります。でも、私は箱根こそ部員全員で戦うものだと思っていたので、やっていなかったんです。しかし風邪が疑われる選手が出ると、スタッフの労力も増えてしまう。思い切って帰省させると、その選手たちにとってもいい気分転換になったようで、マネージメントとしては成功しました」