“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
齋藤学のマリノス愛を見た9年前。
ロシアW杯、海外移籍は諦めない。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2017/09/27 16:30
2008年の齋藤学の「あの姿」。9年前のこの時から、齋藤はずっと己の道を信じて走り続けてきた。
ベンチ入りメンバーでもない齋藤がなぜ……。
ベンチ入りメンバーにもなっていない彼に、出番は絶対にやってこない。
しかし、彼は背番号10のユニフォーム、パンツ、そしてソックスまで「フル装備」の状態で、ベンチのずっと後ろでひとり座って、戦っていた。
仲間の戦況をじっと見つめ続け、ピンチになると両手を合わせて祈りながらピッチのボールを目で追った。
その姿はまさに12番目の選手だった。ピッチの選手、ベンチの選手と一緒に彼は全力で戦っていた。
そして、彼の想いが通じたのか、69分に当時1年生だったFW小野裕二(現・サガン鳥栖)が投入されると、端戸、小野裕二、そしてMF小野悠斗(現・FC岐阜)を中心にしたマリノスユースの攻撃にリズムが生まれ始める。
74分、佐藤の左CKを甲斐が押し込んで、試合を決定付ける3点目。チームメイトがベンチ入りメンバーと抱き合って、歓喜の輪が出来る中、齋藤は1人小さくガッツポーズをした。
終盤にはアルビレックス新潟ユースの猛攻に合うが、気迫で守りきり、タイムアップ。3-1の勝利を収め、ベスト8進出を決めた瞬間、ずっと不安そうな表情をしていた齋藤にようやく安堵と小さな笑みがこぼれた。
こういう男だからこそ、J1優勝とW杯出場を!
激戦を終えて引き上げて来た仲間のひとりひとりを齋藤はユニフォーム姿で迎えると、チーム全員でサポーターに感謝を伝える列の中に入って、さらに満面の笑みを見せた。
この一連のシーンを見ながら、彼の暖かい人間性と強烈なリーダーシップについて考えてみた。そして筆者は、彼のそんな熱い気持ちに触れたことで「絶対に日本代表まで行って欲しい」と心から願うようになったのだ。