“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
齋藤学のマリノス愛を見た9年前。
ロシアW杯、海外移籍は諦めない。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2017/09/27 16:30
2008年の齋藤学の「あの姿」。9年前のこの時から、齋藤はずっと己の道を信じて走り続けてきた。
トップチームに帯同していたはずの齋藤が、なぜ!?
実は、彼はこの試合の帯同メンバーではあったが、ベンチ入りメンバーではなかったのである。
普通、ベンチ入りメンバーでなければ、トップチームでデビューしているような選手がユースの試合の帯同メンバーとして来ることはほぼ無い。しかも、ここはホームではなく、横浜から150km以上も離れた茨城県のひたちなかである。
しかし、いないはずの彼はいた――。
実はこの試合の前日の9月20日には、J1第25節のジュビロ磐田vs.マリノスが、エコパスタジアムで行われており、彼はこの試合で出番こそ無かったが、ベンチ入りしていた。
試合終了後、その日のうちに横浜に帰り、翌日はトップチームがオフだったため、齋藤が自ら志願してのユースチーム帯同だったのだ。
「やっぱり僕はユースの選手ですし、みんなと一緒に戦いたいので……」
笑顔で語ってくれたこの言葉には、チームで10番を背負う強烈な責任感と、チームへの愛情の2つの魂が込められているように感じた。
そして、試合が始まると、彼はメインスタンドで試合を見つめていた。
最初は、普通にスタンドで観戦していた齋藤。
試合はマリノスユースが先手必勝とばかりに攻勢に出た。開始早々の4分にMF佐藤優平(現・モンテディオ山形)のCKのこぼれをDF岡直樹が蹴り込んで先制すると、11分にFW端戸仁(現・湘南ベルマーレ)のパスを受けたDF甲斐公博が追加点。リードを2点に広げた。
しかし、20分に右CKにアルビレックス新潟ユースのMF酒井高徳(現・ハンブルガーSV)にヘッドで1点を返されると、そこから試合は一進一退の激しい攻防戦と化していった。
後半に入っても白熱の攻防戦が続く……。ゴール裏で写真を撮っていた筆者が、ふとスタンドを観ると、齋藤の姿が無かった。
その姿を探すと……マリノスユースのベンチの白いテントのさらに奥にある、チームロッカーとなっていたメインスタンド下の狭いエリアに並べられたパイプ椅子に、トリコロールのユニフォームとソックスをはいている選手が、ただ1人ぽつんと座っているのが目に入ってきた。
慌ててカメラの望遠レンズを向けると、それが、齋藤学だった。