“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
躍進の筑波大、天皇杯8強ならず。
大宮に肉薄も、僅かで大きな隙。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2017/09/21 12:00
卒業後はジュビロ磐田への入団が決まっている中野。磐田ユースから大学進学し、ふたたび「磐田の黄金時代を作るため」(中野)に戻ることとなった。
3本も決定的なシュートを打たせていることが敗因。
「前半、清水選手に自由に足を振らせてしまった。PKを獲られたシーンもハンドかハンドではないかは別として、清水選手が胸トラップしてからシュートを振り切るまでの間合いがあったことが問題。公式記録を見ると、清水選手だけに前半で6本もシュートを打たれている。そのうち1本がゴールにつながり、2本がバーとポストを直撃した。1トップに対して僕らは2人のセンターバックで対応していたのに、そこまで打たせて、なおかつ3本も決定的なシュートを打ちきらせてしまったことが、そもそもの敗因だったと思います」
前半、筑波大の連動したプレスは、大宮に対して明らかに効いていた。しかし1トップの清水がシュート体勢に入ったときの守備に限って言えば、鈴木大が言う通り明らかに弱かった。ディフェンス陣が、十分に寄せきれていなかったのだ。
J1クラスのストライカーがアタッキングサードに入れば、僅かな隙を突いて強烈なシュートを打ってくる。“足を振る”だけのわずかな時間でも与えてしまったら、シュートの精度は一気に上がり、ゴールに繋がる確率は高くなる。
もし早く寄せていたら、正対してブロックしたら……。
大宮がPKを獲得したシーンも、右サイドからのMF岩上祐三の高く上がったクロスを、筑波大CB山川哲史が清水に簡単に胸トラップをさせてしまったことが最初のミスだ。
さらにトラップでこぼしたボールに、清水がダッシュして追いつき右足ハーフボレーを放った時に寄せきれず、山川が清水に背中を向け、ボールが見えない状態のままシュートブロックに入ってしまった。これが2つ目のミスだった。
一連のプレーで後手を取り、清水に足を振り切る時間を与えてしまった。もしこのシーンで寄せるスピードがもっと早く、清水に正対する形でシュートブロックに入っていたら、清水は足を振り切れなかったかもしれないし、ボールは手に当たらなかったかもしれない。
もちろん山川は今年に入って急成長を遂げた選手であり、能力のある選手であることは間違いない。だが……こうした一見些細にも思えるプレーが、試合を大きく動かしてしまったのも事実だった。