フランス・フットボール通信BACK NUMBER
ロシアW杯で優勝するのは仏代表だ!
最強軍団を率いる監督デシャンの苦悩。
text by
パトリック・ウルビニPatrick Urbini
photograph byPierre Lahalle
posted2017/09/21 11:00
オランダ戦では華麗なプレーで得点、フランスを勝利に導いたムバッペだが、ルクセンブルグ戦では低調なプレーのまま無得点に終わり、結局ドローに。
どれだけ才能溢れる選手でも、足りない要素はある。
彼らの才能がどれほどのものであろうと、真のトップレベルであるためのすべての要件を持ち合わせているわけではない。それがルクセンブルク戦の思わぬ引き分けで明らかになった現実であった。
では、具体的に何が足りないのか。
たとえばそれはスペースを見いだすために必要な「忍耐強さ」と「正確な技術」であり、効果的なクロスとセットプレーをおこなうための「クオリティ」であり、とりわけフィニッシュを決め切る「落ち着き」であった(76%のボール保持率と34本のシュート。うち枠内は9本で、2本がバーを叩いた)。
思いもかけない大勝に終わったオランダ戦の後、デシャンはルクセンブルク戦を予兆するかのようにこう語っている。
「これ(結果)こそが試合の真実だ」と。
そしてルクセンブルグ戦の後ではこうも述べている。
「サッカーではすべてを論理的に説明できるわけではない。勝つためにすべてのことをして、これだけのチャンスを作りながら勝てないこともある。そうだろう」
フランスサッカー協会会長も絶大な信頼を寄せる。
デシャンの思惑通りにいかなかったのは、ルクセンブルク戦だけに限らない。
例えば2013年11月15日のブラジルワールドカップ・予選プレーオフのウクライナ戦(0対2の敗戦)がそうであり、EURO2016のラウンド16のアイルランド戦(苦戦の末2対1の勝利)や今年6月9日のロシアワールドカップ予選のスウェーデン戦(アウェーで1対2の敗戦)がそうであった。
しかしデシャンは、他の監督に比べて過ちが少ないのは間違いなく、ルクセンブルグ戦のスターティングメンバー(オランダ戦からの変更はコマンに代えてムバッペを起用したのみ)にも議論の余地は何もなかった。
フランスサッカー連盟のノエル・ルグラエ会長が絶大な信頼を寄せるのも、その実践的な特質と能力の高さを認めているからである。
恐らくデシャン自身も意識しているのだろう。
監督の運命は、実現するプレーのクオリティよりも、結果にこそ強く結びついているということを。異論を唱えるものたちに、彼はよくこう語りかけている。
「言葉ではよく言うが、プレーのアイデンティティとはいったい何なのか?」と。