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高騰する移籍金はどこから出てる?
ネイマール290億円移籍の背景。
text by
並木裕太Yuta Namiki
photograph byAFLO
posted2017/09/13 11:00
ネイマールだけでなくムバッペが加わったPSG。カバーニを含めれば移籍金にして“570億円トリオ”である。
中国、アメリカによる獲得競争のグローバル化。
市場全体が成長した恩恵を受けて移籍金がベースアップしていることが読み取れると同時に、増えた収入が積極的に移籍金に投じられていることも見えてきます。
それではなぜ、各クラブは増収によって新たに使えるようになったお金を移籍金に回しているのでしょうか。
理由の1つは、選手獲得競争がグローバル化していることだと推察されます。
フィールドマネージメント社の調べによると、2010-11シーズン、世界の年俸トップ100の選手のうち、実に95人が欧州5大リーグに所属していました。ところが2015-16シーズンになると、欧州5大リーグに所属する選手は80人まで減り、その代わり、中国やカタールといった国々のリーグに属する選手たちがトップ100に食い込むようになっています。
なお、2010-11シーズンにおける年俸トップ100のうち欧州5大リーグ以外でプレーしていた選手は、ケビン・クラニー(ディナモ・モスクワ=ロシア)、ロナウジーニョ(フラメンゴ=ブラジル)、デイビッド・ベッカム(LAギャラクシー=アメリカ)、デコ(フルミネンセ=ブラジル)、ティエリー・アンリ(ニューヨーク・レッドブルズ=アメリカ)の5名でした。
アジア、中東、北米等のビッグマネーが移籍市場に流れ込んだことで、競争が激化し、価格が高騰している面があるのではないでしょうか。
放映権争い、スター選手加入、リーグの価値の維持。
また「放映権」争いがそこに拍車をかけている可能性もある、と私は推察します。
そもそも近年の欧州リーグの経済的成長は、放映権収入の伸びによってもたらされた部分が大きいと言えます。大容量録画やオンデマンドサービス、インターネットの無料動画などが浸透し「いつでも好きな時に視聴できる」環境が整った映像エンターテイメント業界において、「リアルタイムで見てこそ醍醐味を味わえる」ライブコンテンツの価値は年々高まっています。
その代表格であるスポーツ、とりわけ世界的に人気の高い欧州サッカーの放映権獲得をめぐる競争は激しさを増し、放映権料の高騰につながってきました。
もちろん多くの場合、放映権収入はリーグを通じて各クラブに分配されるため、個別のクラブが移籍金を積み増す直接の理由にはなりません。ただ、高い移籍金を支払ってでもスター選手を獲得することはチームの強化に加えて、リーグの価値を高め、ひいては分配金の増加という果実を得ることにもつながるので、クラブにとってのメリットも決して小さくないはずです。