プレミアリーグの時間BACK NUMBER
2000億円が動いたプレミア移籍市場。
補強査定すると勝ち組、負け組は?
posted2017/09/09 11:30
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph by
Getty Images
総額約14億ポンド(2000億円弱)と、プレミアリーグ移籍市場は今夏も過去最高となる資金が投じられた。そして国内ブックメイカーによる今季タイトルレース予想には、補強費用の規模が直接的に反映されているようだ。移籍金支出が2億ポンド(約280億円)台に乗ったマンチェスター・シティが、2倍未満の最低オッズで優勝の最右翼と見られている。
就任2年目のペップ・グアルディオラ監督が意中の補強候補をほぼ手に入れたことは事実だ。特に指揮官が最も重きを置いていたサイドバックは、揃って30代だった昨季の顔ぶれが一新され、カイル・ウォーカー(前トッテナム)、ベンジャミン・メンディ(前モナコ)、ダニーロ(前レアル・マドリー)という、攻守にエネルギー源となれる3名が獲得された。
ただし最終ライン中央は、故障の多いバンサン・コンパニに依存する部分が大きいままだ。タレントが豊富な2列目にベルナルド・シウバ(前モナコ)まで加わった攻撃力は相当なものがあるが、楽勝や圧勝が計算できる試合などないことは、辛勝に終わった3節ボーンマス戦からも明らか。守備の不安が取りこぼしを招く危険性は今季も否定できない。
この弱点はリバプールも同様である。前線のキーマンであるフィリペ・コウチーニョのバルセロナ行きは阻止したが、守備の要としてサウサンプトンからビルヒル・ファンダイクを引き抜くこともできなかった。
ルカクら獲得でモウリーニョ監督は余裕綽々。
その点、マンチェスター・ユナイテッドはチームを縦に貫く背骨が強化されて安定感を増した。CB陣には若く屈強なビクトル・リンデロフ(前ベンフィカ)を加え、新ボランチにはネマニャ・マティッチ(前チェルシー)と見た目からして頑強だ。前線に君臨する巨漢のロメル・ルカク(前エバートン)は、攻撃面でのダイナミックな迫力を加えている。
100億円台の移籍金を要したルカクは、今夏のプレミアで最も高価な新戦力だが、開幕3戦3得点の滑り出しで、すでに割高感は弱まっている。その理由の1つとして、7月上旬という獲得の早さがある。それとは対照的に移籍期限の8月31日に、地元の宿敵マンCがアーセナルとのアレクシス・サンチェス獲得商談で一喜一憂し、最終的には呆然とさせられている。
一方、マンUのジョゼ・モウリーニョ監督は邸宅のあるロンドン市内でリラックスした移籍市場最終日を過ごしていた。指揮官が就任2年目の補強を経て見せた余裕といい、チームのパワーアップ具合といい、マンUを優勝候補の筆頭とみなして良いだろう。