スペインサッカー、美学と不条理BACK NUMBER
バルサのカンテラで学ばなかった男。
自己中デウロフェウ、覚醒なるか。
posted2017/09/15 11:00
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph by
Getty Images
正直、彼には全く期待していなかった。
オフザボールの動きや守備意識は皆無。唯一の武器であるキレとスピードに任せたドリブル突破も、右サイドで縦に抜け出すスペースがあるという条件下でなければ発揮できない。なおかつ、その能力を発揮できた場合もボールを持ちすぎてチャンスを潰してしまうことが多々ある。
本当に、こいつはラ・マシアでフットボールを教わってきたのか。
馬鹿の一つ覚えのようにボールをこねくり回す姿を目の当たりにするたび、何度首をひねったことか。つまるところ、彼のプレーからはインテリジェンスと言える要素が全く感じられないのだ。
申し遅れたが、ジェラール・デウロフェウの話である。
だから今夏に復帰が決まった際も、どうせバルサには残れないだろうと思っていた。実際クラブが買い戻しを決めたのは転売の可能性も考慮した上でのことだったし、本人もプレー機会を得られなそうであれば移籍を検討していたはずだ。
ネイマールを失い、獲得できたのはデンベレのみ。
しかし、その後状況は劇的に変わった。
クラブはネイマールを失い、その穴埋めとなるはずだったコウチーニョもディマリアも取り逃がした。
結局、加わった新戦力はウスマン・デンベレのみだ。ネイマールバブルのおかげで移籍金が跳ね上がり、クラブ史上最も高額な選手としてやってきた彼はしかし、バロンドール受賞者でもCL優勝経験者でもない。
メッシの後継者となるはずだった背番号11、行き場をなくしたファンとメディアの期待感、さらには失策続きで窮地に追い込まれた執行部の命運まで20歳の新入りに委ねているようでは、今季のバルサもだめだろう。
だから見守ることにした。どうせ期待のできないシーズンならば、ダメ元でカンテラーノの覚醒を待ってみても良いのではないか、と。