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史上最強から3年後の湘南スタイル。
秋元陽太、GK視点で見るDNAと変化。
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2017/09/09 07:00
湘南の最後方に戻ってきた秋元。J1で苦い経験をした30歳は、自らを飛躍させたクラブのためにすべてを尽くしている。
「今のチームはとにかく真面目なんです」
最終的には同点に追い付かれたが、試合内容自体は良かった。攻撃はどんどん後から人が追い越していく、あるいはサイドから細かくつないで打開していく。横浜FCの守備陣が湘南の選手をうまく捕まえ切れず、完全に後手後手になっていた。
曹貴裁監督が就任以来、築き上げてきた攻撃サッカーのDNA。今もしっかりと受け継がれている。
前述した「史上最強」、'14年の湘南スタイルを築いたレギュラーメンバーは秋元と菊地俊介、藤田征也しかいなくなってしまった(当時出場機会は限られていたとはいえ、石川俊輝、島村毅も勘所で一役を担った)。それでも、当時にはない良さが今のチームにはあると秋元は言う。
「当時はほとんど負けることがなく、本当に強かったですよね。今のチームはその時と違ってとにかく真面目です。負けた時とかビデオでしっかりと何が悪かったのかを分析し、理解して、それを試合まで修正している。そのおかげで連敗が1度もないんです。それと、'14年の時はわりとみんな淡々とプレーしていたんですが、今は選手全員がよく声を出している。キツい中でも出せるようになってきたので、そういうところは今年の前半戦と比べても成長してきているのかなと思います」
負傷者続出の中で総合力が上がる副産物が。
もう1つ、秋元は現チームは当時の湘南よりも優れている部分があると見ている。
「チームのまとまりです。これだけ多くのケガ人が出ている中、チームのやり方を崩さず、試合に出た選手が一生懸命戦っている。ケガ人が多いのは問題ですが、その中でもこれだけの成績を上げているのは勝つためにみんながまとまっているからです。それはすごく感じますね」
主将の高山薫をはじめ、菊地、岡本拓也らが故障中で、移籍してきたムルジャも一時的に軽傷を負った。また藤田征也もようやくケガから復帰してきたばかり。'14年の湘南は永木亮太(現鹿島)や遠藤航(現浦和)ら主役に引っ張られる形でチームは快進撃を続けたが、今のチームはケガ人が多いため、日替わりで出た選手が必死に活躍しなければ勝てない。
ただ、いろんな選手が試合経験を積める分、チームの総合力が上がるという副産物を得ている。それはJ1に復帰した際、必ずやチームの力になるだろう。