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高萩洋次郎が味わった敗北感と情熱。
「このままじゃ代表では戦えない」

posted2017/09/09 08:00

 
高萩洋次郎が味わった敗北感と情熱。「このままじゃ代表では戦えない」<Number Web> photograph by Asami Enomoto

W杯行きを決めたオーストラリア戦、高萩洋次郎は歓喜の輪の中にいた。次はピッチに、彼はそう思っているはずだ。

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西川結城

西川結城Yuki Nishikawa

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Asami Enomoto

 灼熱のサウジアラビアでの戦い。その30時間後、朝の東京・小平のグラウンドに、高萩洋次郎がいた。

 時差と長旅移動も何のその。前日深夜に帰宅し、翌日朝から所属チームのFC東京の練習に参加。2日後に迫ったセレッソ大阪戦に向けて、紅白戦を2本こなすタフぶりだった。

 来年6月から開催されるロシアW杯への出場切符をつかんだ日本代表。8月31日のオーストラリア戦勝利の余韻がまだ残る。しかし、アジア最終予選の最終戦となった5日のアウェー・サウジアラビア戦は0-1で敗北。今回3月以来約半年ぶりに代表に招集された高萩だったが、いずれの試合も出場機会には恵まれなかった。

「今回は試合に出ていないので、そこまで疲労はない。今日もコンディションを落としたくないので、練習しました。すぐにセレッソ戦がある。中盤で(山口)蛍とマッチアップするので、1人のライバルだと思って戦いたい」

 3月の招集は、約3年半ぶりの代表復帰だった。2013年夏、当時のアルベルト・ザッケローニ監督体制時に戦った東アジアカップ。Jリーグでプレーする国内組のみで構成されたチームで高萩は主力組のトップ下に入り、チームの優勝に貢献した。パスセンスやテクニックといった、見た目にも派手さのあるプレーはすでにサンフレッチェ広島でも彼の定番だった。代表でもその片鱗を覗かせていた。

FCソウルでKリーグ制覇も経験し、再び日本へ。

 その後、代表定着はならなかったが、2015年からオーストラリア、韓国と立て続けに海外クラブに所属。AFCチャンピオンズリーグ(ACL)ではFCソウル時代にベスト4に進出し、Kリーグ制覇も成し遂げるなど、勝利の味をしっかりと味わい、今冬に日本復帰を果たした。

 今季、高萩以外にもストライカーの大久保嘉人やピーター・ウタカといったJ1得点王の経験者、さらに守護神の林彰洋など実力者を多く補強したFC東京。しかし現在、リーグ戦では例年同様中位に低迷し、苦戦が続いている。

 経験豊富な多くの選手が個々で持つサッカー観。これを1つに束ねて大きなパワーにできるかが今季の焦点だったが、ここまでは強力な個性が散漫になったままの戦いとなってしまっている。戦術的にもメンタル的にも1つにまとまり、同じ方向に推進せずして、やはり集団競技の勝利は難しい。

【次ページ】 天才肌のスタイルから、完全に守備の選手に。

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