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井手口と浅野が変えた予選の意味。
2017年8月31日は歴史の転換点に。 

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戸塚啓

戸塚啓Kei Totsuka

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photograph byAsami Enomoto

posted2017/09/01 11:40

井手口と浅野が変えた予選の意味。2017年8月31日は歴史の転換点に。<Number Web> photograph by Asami Enomoto

試合を、つまりW杯出場を決める2点目をゴール右隅に突き刺した井手口陽介。21歳、この衝撃は鮮烈だった。

浅野と井手口が決めたことに価値がある。

 オーストラリアを2-0で退けた8月31日のスタメンに、本田圭佑、岡崎慎司、香川真司の名前がなかった。キャプテンの長谷部誠が昨年11月以来のスタメンに復帰し、川島永嗣、長友佑都、吉田麻也らとともに経験をもたらしたが、決定的な仕事をしたのは浅野拓磨であり、井手口陽介だった。シュツットガルト在籍のFWは22歳であり、ガンバ大阪所属のボランチは21歳である。

 昨夏のリオ五輪に揃って出場したふたりの選手起用には、「抜擢」や「賭け」といった表現も使われた。そこに、この日の勝利の意味がある。

 本田でも香川でも岡崎でもなく、最終予選序盤のチームを牽引した原口元気でも、3月の最終予選で2得点した久保裕也でもなく、浅野と井手口が最終的かつ決定的な仕事を見せたところに、はかりしれない価値があるのだ。

 5万9千人を超える観衆の集まった埼玉スタジアムでヒーローとなった2人は、個人的に大きな自信をつかんだだろう。代表チーム内での序列はひとまずアップしたが、ハリルホジッチ監督がいつでも、どこでも、彼らにすがることはない。

戦術的な柔軟性は、今すぐ本大会に対応できるレベル。

 時にエキセントリックな言動もする指揮官は、特定の個人に寄りかかるようなチーム作りではなく、誰がピッチに立っても機能するチームを作り上げてきた。その先に見据えるのは、もちろん来夏のロシアW杯である。

 '14年のブラジルW杯でアルジェリアを率いたハリルホジッチ監督は、試合ごとにスタメンを入れ替える戦略でグループステージを突破し、決勝トーナメント1回戦では優勝したドイツを追い詰めた。

 世界のトップオブトップを形成する立場ではない日本も、「自分たちのサッカー」で押し通すには限界がある。揺らぎやブレではなく柔軟性と呼べる範囲内で、戦いかたの引き出しを増やしておくべきだ。それこそは、アルベルト・ザッケローニの日本代表に無かったものであり、戦術的な成熟度を別とすれば、いますぐW杯が開幕しても対応できる──そんなチームになっていると言ったら、少しばかり大げさだろうか。

【次ページ】 個人に依存しないチームだが、大迫の替わりはいない。

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