サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
井手口と浅野が変えた予選の意味。
2017年8月31日は歴史の転換点に。
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byAsami Enomoto
posted2017/09/01 11:40
試合を、つまりW杯出場を決める2点目をゴール右隅に突き刺した井手口陽介。21歳、この衝撃は鮮烈だった。
個人に依存しないチームだが、大迫の替わりはいない。
特定の個人に依存しないチーム作りのなかで、取り替えの効かない選手もいる。
大迫勇也である。背番号15を背負う27歳は、「屈強」という表現を自動的に使いたくなるオーストラリアのDFを相手に、ほぼパーフェクトなポストワークを披露した。サポートが少ないなかでロングボールを受ける局面でも、身体のバランスを崩すことなく、次のプレーにしっかりとつなげることのできるパフォーマンスは、選手同士の距離感や連動性の不足を見事なまでに補っている。彼自身はゴールを奪うことができなかったものの、別格の存在感だった。
最終予選突破の立役者として、酒井宏樹の名前もあげておきたい。
内田篤人が長期離脱中のチームで、この27歳は出場停止だったアウェイのオーストラリア戦を除く8試合に先発している。一つひとつのプレーは必ずしも観る者を納得させるものでなく、ときにため息を誘うシーンはあるものの、右サイドバックのスペシャリストが彼以外に見当たらないメンバー編成が続いたなかで、チームを下支えしたのは間違いないはずだ。
世代交代だけでなく、予選の戦い方の新機軸。
W杯出場を決めるまでは経験を何よりの拠りどころとし、そうした采配を容認する傾向の強かった日本の価値観を、ハリルホジッチ監督は今回の最終予選で覆した。選手起用が失敗につながることはあったものの、黒星スタートのチームはW杯に出場できていない、W杯予選ではオーストラリアに勝っていない、といったデータを打ち破り、新たな世代の台頭をこの段階で促したのは評価されていい。
ロシアW杯へ向けたプロセスでも、不測の事態に直面するかもしれない。そのようなことがあっても、ハリルホジッチ監督のチームはすでに苦境を乗り越えてきた。今回のオーストラリア戦と同じように、意欲的に、勇敢に、大胆に戦うことを、選手は、サポーターは、メディアは、受け入れることができる。求めることもできる。そうした雰囲気は、ピッチに立つ選手たちの自信を強く太くする。
6大会連続6度目のW杯出場を決めたオーストラリア戦は、単に世代交代を印象付けただけでなく。「最終予選をどうやって勝ち抜くか」という意味においても新たなページを開くものだった。
日本サッカーは、歴史の転換点を迎えたのだ。