フランス・フットボール通信BACK NUMBER
リヨン会長J.M.オラス会長の告白。
「ネイマールひとりに10億ユーロって?」
text by
エリック・シャンペルEric Champel
photograph byStephane Mantey
posted2017/08/24 11:10
就任して30年、多くの歓喜をクラブにもたらしてきたオラス会長(写真中央、柵を掴む紺色のネクタイの人物)。サポーターからも絶大な信頼を寄せられる。
「いつはじけてもおかしくないバブルだ」
――この移籍はまた、あなたが中心となって確立した「ファイナンシャル・フェアプレー」にも大きく抵触するのではありませんか?
「私は決して“アンチPSG”の立場ではなく、途方もない財力を行使しているナスルを高く評価している。ただ私は、もう少し先まで視野を広げようとしているだけだ。
短期的に見れば、ネイマールの移籍は誰に対してもプラスの効果をもたらす。しかし中期的な視点に立ったときに、経済全般の規制緩和と、とりわけサッカー経済に対する規制緩和のメカニズムがどうなっていくのかを懸念せざるを得ない。
30年以上リヨンというクラブを私は運営してきた。会長に就任した当初(リヨンは当時2部リーグ所属)の年間予算はおよそ200万ユーロだった。それが今では2億5000万ユーロだ。われわれの3倍もの予算規模のクラブすら幾つかある。
それこそいつはじけてもおかしくないバブルだと、私は思っている。こんなバブルが長続きするはずがない。
それからファイナンシャル・フェアプレーについては……ミシェル・プラティニが2015年にFIFAにおいて資格停止処分を受けたとき、われわれは最大の擁護者をひとり失ってしまったということになったのだ」
クラブ運営の資金の流れをもっと厳しく監視すべき。
――リーグアンに参入する新たな投資家の中には、できるだけ早く利益をあげようとする者たちがいます。リールのジェラール・ロペス会長がその典型で、負債の返済のために選手の移籍をおこなおうとしています。
「それこそ心配の種で、私がリーグの実行委員会を離れて協会理事会に加わる決意を固めたのも、彼らに警鐘を鳴らすためだった。
フランスという国家による規制に私は信を置いている。ファイナンシャル・フェアプレーがヨーロッパレベルで抑制機能を失ったら、次善の策としては国家がその役割を引き継ぐべきだ。
リールやモナコとリヨンとの違いは、リヨンはこの20年間、選手の育成のためにアカデミーに毎年1000万ユーロ近く投資していることだ」
――公的権力は、フランスのサッカー市場健全化のために介入しうると思いますか?
「クラブ運営の資金の出所を明らかにし、コントロールするための政策をとるべきだ。同時にリーグも協会も、育成組織を保護するための政策を実施する。そうしない限り、フランスサッカーは健全な発展を遂げられないだろうね」