スペインサッカー、美学と不条理BACK NUMBER
ネイマール売却290億円が無駄金に?
バルサフロント、強化戦略が迷走中。
posted2017/08/19 07:00
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph by
AFLO
「ネイマールはもう過去。移籍を望んだのは彼であり、もっと早くにその意思を明らかにできたはずだ。コレクトな去り方ではなかった」
8月7日、ジョアン・ガンペール杯に先立って行われたペーニャ総会(サポータークラブの総会)の壇上にて、バルセロナのジョゼップ・マリア・バルトメウ会長はパリ・サンジェルマンへ移籍したネイマールに対する恨み節を口にしていた。
ネイマール去りしバルサの初陣となったこの日、カンプノウのスタンドからは「お前なんか嫌いだ、ネイマール、ムエレテ(死ね)!」なんてチャントも聞かれた。
移籍決定から4日。まだクラック喪失のショックが生々しく残っていただけに、仕方のないことではある。とはいえ、いつまでも去った人間のことを考えていても仕方ない。バルトメウの言う通り、もうネイマールは過去でしかないのだ。
今こそ“MSN頼み”脱却のチャンスとも言えるが……。
もちろん、ネイマールの抜けた穴を埋めるのは簡単なことではない。だが見方を変えればプラスに考えることもできる。
過去3シーズン、バルサは良くも悪くもメッシ、スアレス、ネイマールの南米トリオを中心としたサッカーに徹してきた。ルイス・エンリケは彼ら3人の破壊力、得点力を最大限に引き出すためのシステムを考え、メンバーを組んできた。その結果、グアルディオラ&ビラノバ時代のポゼッション至上主義は影を潜め、より縦に速く攻めるスタイルに傾倒してきたのは自然な流れだった。
だがその傍ら、前の3人が不動であるためにシステムや人選の選択肢が限られ、守備面で中盤以下の選手に大きな負担がかかるという構造的問題がつきまとっていたことも事実だ。その点、アンタッチャブルな選手が1人減った今季は采配の幅が広がったと言える。
問題はその広がった幅の中で、何を重視して方向性を打ち出すかである。