フランス・フットボール通信BACK NUMBER
リヨン会長J.M.オラス会長の告白。
「ネイマールひとりに10億ユーロって?」
text by
エリック・シャンペルEric Champel
photograph byStephane Mantey
posted2017/08/24 11:10
就任して30年、多くの歓喜をクラブにもたらしてきたオラス会長(写真中央、柵を掴む紺色のネクタイの人物)。サポーターからも絶大な信頼を寄せられる。
ネイマールの移籍の何が問題かというと……。
――ネイマールを獲得したPSGとモナコのふたつは、財政レベルでリーグアンで突出しているといえますか?
「リーグアンのクラブ予算には大きなバラつきがある。ネイマールの獲得にPSGが正確にいくら使ったか知らないが、5年間で10億ユーロというのが本当であれば、現実はわれわれの想像をはるかに越えている。リヨンにはそんなことはとてもできない」
――どうしてですか?
「私はリヨンを財政危機に陥らせることはできない。豊富な天然ガス資源を持つカタールのような国家に後押しされた投資には、とてもではないが対抗できない。とりわけ現状ではそうだ。ただそれがまるで可能であるかのように、サッカー経済は推移しつつある。
ネイマールの獲得によってPSGの年間予算は7億ユーロ近くにまで膨らんだ。クラブが支出に見合う収入を確保できなければ、すでに健全なバランスを失っている経済の不均衡はさらにさらに酷くなる。
だがポジティブな側面もある。それはリーグアンに対するスポンサーの関心が高まり、新たなパートナーを獲得しやすくなることだ。テレビ放映権料の増額も見込める」
UAEを別にすれば、カタールに対抗できる勢力は無い。
――移籍はフランスサッカーにとって、千載一遇の発展の機会ということですか?
「ああ、素晴らしいことだ。ただ、すべては『今後(選手移籍に)どれだけかかるのか?』にかかっている。
われわれは経済規制緩和の危険なシステムの中に陥りつつある。UAEを別にすれば、カタールに追随できるものは誰もいないだろう。
バランスのとれたフランスのテレビ局である『カナル・プリュス』と、国家(カタール)の後押しを受けたスポーツ専門テレビ局『beINスポーツ』、10億ユーロの借金を抱えたフランスのIT系メディア企業『SFR』の間に起こったテレビ放映権を巡るメディア争いと似た状況の中にわれわれは入り込んでいるのだと思う。
規制緩和は多方面にわたり、現実的にはコントロールが難しい。彼ら(巨大資本)に対抗できる武器は誰も持ちえないだろう。幸いなことにリヨンは、正のスパイラルを描く健全なモデルを構築できたが」