フランス・フットボール通信BACK NUMBER
リヨン会長J.M.オラス会長の告白。
「ネイマールひとりに10億ユーロって?」
text by
エリック・シャンペルEric Champel
photograph byStephane Mantey
posted2017/08/24 11:10
就任して30年、多くの歓喜をクラブにもたらしてきたオラス会長(写真中央、柵を掴む紺色のネクタイの人物)。サポーターからも絶大な信頼を寄せられる。
ネイマールは仏サッカーの継続的安定に寄与しない。
――ネイマールを2020~24年のテレビ放映権交渉の材料にすべきだと考えますか?
「いや、それは一時的な値上げ材料に過ぎず、フランスサッカーに継続的な安定はもたらさない。ネイマール自身に関しても同じで、一時的な効果は大きいかも知れないが継続性とは無関係だ」
――移籍はパンドラの箱を開けたのではありませんか。巨額の弁済条項ですら、ひとりの選手を留める制約には、もはやならなくなってしまったかに見えますが。
「実質的には、システムの崩壊なのだろう。
フランスは公正さの理念のもとに大統領を選ぶが、それは同時に個人的なパフォーマンスの評価でもあった。(ネイマールの移籍も)社会的に認知された規範と、個別の企業が追求する価値の衝突であるといえる。
果たしてああした移籍が、バランスのとれた社会生活や経済と両立しうるものなのか?
議論すべきは国家の指導によるさまざまな(クラブにおける)負債の減額であり、(選手の)働く権利をより強く保障するための交渉だろう。
ひとりの市民として私は、ひとつの移籍にこれほど巨額な金銭が動くことへの疑問を禁じ得ないがね」
「われわれのスタジアムも、PSG戦は必ず満員になる」
――多少のやっかみもありませんか?
「いや、むしろ逆で、もしナセル(アルケライフィ、PSG会長)がこの移籍を実現できるだけの財力と可能性を本当に持っていたのであれば、私はもろ手を挙げて彼を祝福したい。
彼のことを悪く言うのは間違いで、すべてのクラブが間接的に利益を得られる。われわれのスタジアムも、PSG戦は必ず満員になる」