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元日本代表・狩野美雪とデフバレー。
指揮官として得た金メダルの意義。 

text by

米虫紀子

米虫紀子Noriko Yonemushi

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photograph byJapan Deaf Sports Federation

posted2017/08/13 07:00

元日本代表・狩野美雪とデフバレー。指揮官として得た金メダルの意義。<Number Web> photograph by Japan Deaf Sports Federation

狩野監督(前列左から3人目)率いる日本が手に入れた悲願の金メダル。ただ競技のさらなる認知のためにはここでとどまるつもりはない。

普通ならコート外から指示を叫べば伝わるが……。

 デフバレーは、見た目には普通のバレーボールと変わらない。しかし、「ライト!」とスパイカーがトスを呼んだり、「任せた!」と隣のレシーバーとの連携をはかるなど、瞬時のコミュニケーションが重要なバレーにおいて、声でやり取りができないことは大きなハンデである。

 対戦した姫路の竹下監督は、「だからこそ約束事をいっぱい作っていると思いますし、本当に視野を広くしないと難しい。そういう面でのレベルが問われる競技なのかなと感じました」と印象を語っていた。

 実際、ディフェンスの配置など約束事は決められていたが、「それがなかなか周知できない」と狩野監督は頭を悩ませていた。

「普通だったら、コートの外から『約束、忘れないように!』と叫べばすむ話なんですけど、そういうわけにはいかないので、なかなか浸透しづらいんです」

彼女たちの視野は、私たちより間違いなく広いです。

 それでも、開幕に向けて密に練習をするにつれ徐々に約束事は浸透し、試合を重ねる中でピタリとはまっていった。

 また、不安材料だったチーム最年少16歳のセッター中田美緒のトスワークが、トルコでは安定し、それが大きなプラス材料になったと指揮官は言う。

「安定したのが何故なのかは正直よくわからないんです(苦笑)。外国チームとやることによって頭が切り替わったのかもしれません。デフバレーの場合も、海外のチームは高さとパワーがあるんですけど、バレーのリズムとしては、大会前に日本で練習試合をやった相手の方が明らかに速かった。日本にいる間はその速さが私たちにとってすごくストレスになっていたと思うし、セッターも考えることが多すぎて、なかなかプレーに集中できていなかったのかもしれない。相手がコンビをパッパパッパと使ってくるので、自分たちもそうしなきゃというふうに流されていたのかなと思います。

 でも海外チームはそこまで速くなかったし、ブロックが高いところ、ここには上げちゃいけないというところが明確だったので、複雑なトス回しやコンビネーションを考えるよりも、まずは丁寧に相手ブロックの弱いところに上げる、ということを心がけたのがよかったんじゃないでしょうか」

 シンプルな戦い方が選手たちの力を引き出した。それでいて、チャンスがあればアイコンタクトを駆使して速攻を使うなど相手の不意をついた。聞こえないからこそ、目と目の会話はより密になる。「彼女たちの視野は、私たちより間違いなく広いですしね」と狩野監督は言う。

【次ページ】 デフバレーの発展を自分たちが担っているつもりで。

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