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スポーツクライミング界初メダルを!
野中生萌&野口啓代、五輪への思い。
text by
Number編集部Sports Graphic Number
photograph byAtsushi Hashimoto
posted2017/08/14 07:30
クライミングウォールでポーズをとる野中(右)と野口。彼女たちにとって2020年は大きなモチベーションとなる。
「登りたい」と思えている時は、とても体が軽い。
――思うようなトライができない時は、どのように気持ちを切り替えていますか。
野中 まったく「課題」がクリアできないような時には、私はひたすら打ち(登り)続けるタイプです。そういう時は自分自身に怒っているんですけど、周囲に対して、「絶対近寄れない」という雰囲気を醸し出しているかも(笑)。でも、そういった視線を感じながらも、黙々と打ち続ける。それでクリア出来なくても、得られるものはあるんですよ。「これがダメだったから、できなかったんだ」って、足りないものが見えてくるんです。
野口 クリア出来なくても、別の「課題」に複数触れてみて、自分の状態が良くなってから再び、元の「課題」へ戻ると、すごく良くなっていることもありますね。
――とくに二人がメインにしているボルダリングは、ダイナミックな動き、そして繊細な動きも求められ、与えられた「課題」に対して、どのようなコースを選択して登っていくのか見極める洞察力も要求されます。スピードやリード以上に難易度や求められる能力が多岐に渡り、メンタルも勝敗を分ける大きな要素になるのでは。
野口 「登りたい」と思えている時は、とても体が軽いと感じますが、逆の感情が心を占めている時は、ホールドにぶら下がった時点で「今日はダメだ」と萎えてしまう。気の持ち方ひとつで、体の重さの感じ方が違ってくるんですよね。
野中 私の場合、「自分はこれも登れないのか」という怒りに変わりますが、それが良い形で出ることもあれば悪く出る時もある。でも、だからといって、メンタルが大きく揺さぶられることはないですね。
2人はタイプ的に正反対のクライマーなんです。
――日本のトップで戦い続けているお二人ですが、互いをどのように見ていますか?
野中 私が言うまでもないけれど、啓代ちゃんは本当にすごく強い。
野口 生萌は、私が苦手な部分や、普段あまり意識したことがない部分をしっかりと意識しているなという印象があります。
野中 タイプ的に正反対のクライマーです。
野口 壁の上で意識していることや、「課題」を登った時の「ここをこうしたら登れた」という感覚も全然違いますからね。
野中 同じ「課題」に対しても、アプローチの仕方が異なるんです。
野口 でも、アプローチの仕方が違っても、同じ「課題」を、同じ回数でクリアしたり、二人とも1回目で登れたり、とリンクするところは面白いですね。