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スポーツクライミング界初メダルを!
野中生萌&野口啓代、五輪への思い。
posted2017/08/14 07:30
text by
Number編集部Sports Graphic Number
photograph by
Atsushi Hashimoto
世界のトップに君臨する女性クライマー。
東京オリンピックでも有力なメダル候補と
期待される二人が熱い思いを聞かせてくれた。
Number926号(4月26日発売)の特集を全文掲載します。
2020年東京オリンピックで新たに実施される競技、スポーツクライミング。ボルダリング、リード、スピードの3種目の合計で競われるが、なかでもボルダリングの競技人口は増加の一途をたどり、注目が集まっている。
'05年、高校1年時に世界選手権リード種目で日本人女子初の表彰台となる3位入賞し、以降、第一人者として活躍する野口啓代と昨年の世界選手権ボルダリング種目で銀メダルを獲得した野中生萌。日本女子トップ2が、競技の魅力や東京オリンピックへ向けての思いを語った。
クライミングウォールを登り切って味わえる達成感。
――お二人は幼い頃からスポーツクライミングをされていますが、クライマーとして生きる覚悟を決めたのはいつ頃ですか。
野口 高校生で進路を決める頃に、大学に行くか、行かずにワールドカップを転戦するかで迷った時期がありました。最終的に大学へ進学したのですが、入学した年に初めてワールドカップで優勝することができて。その優勝が後押しになってプロとして活動することを決めました。その後、大学も1年で辞め、世界一になりたいという一心で、今日までクライミングを続けてきました。
野中 私は啓代ちゃんたちがプロとして世界のトップで既に活躍していた頃、ちょうど進路を決める時期を迎えていたんですが、先輩たちがいたからこそ、迷うことはなかったですね。クライマーとしてやっていこうと心に決めました。クライミングが大好きで、この競技を極めたいという思いが強かったことも大きいです。
――クライミング競技の魅力とは。
野口 やはり、クライミングウォールを登り切ったときに味わえる達成感ではないでしょうか。もちろん、コンペ(大会)でいい結果を出した時もそれは感じられますが、ずっと登れなかった「課題」(壁一面に色とりどりのホールドが付けられ、使用できるホールドが指定されたもの)をクリアし、登り切れた時の嬉しさや、ある種の達成感は格別です。逆に言えば、大会で結果を残したとしても、納得のいくトライや登りができていなければ、ちょっと不満が残ってしまう。難しいところですね。
野中 私もその達成感が、クライミングの大きな魅力だと感じています。それに、個人競技でありながらも、いろいろな人とのかかわりがあって、コミュニケーションが多いスポーツでもあります。トレーニングでは「課題」をどう攻略していくのか、仲間と策を出し合いながら答えを見つけられるのも、魅力の1つだと思います。