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あのブレイディ来日でも騒がれない。
日本でのアメフト認知に必要なこと。
posted2017/08/14 08:00
text by
別府響(文藝春秋)Hibiki Beppu
photograph by
AFLO
「良い選手がいれば、アメリカに連れて帰ろうと思っているんだ」
今はまだ“リップサービス”と受け取る方が良いのだろう。
2017年6月、NFLのトップQBであるトム・ブレイディ(ニューイングランド・ペイトリオッツ)が来日した。アンダーアーマー社が手掛けたアジアツアーの一環として、学生へのスポーツクリニックや相撲部屋への出稽古など、公私で様々なイベントに参加し、多くの話題を提供してくれた。
ブレイディといえば“世界で最も稼ぐモデル”であるジゼル・ブンチェンを妻に持ち、自身もスポーツ選手の長者番付上位の常連でもある。その甘いマスクと品行方正な立ち振る舞いも相まって、アメリカでの好きなスポーツ選手のアンケートでは必ず上位に入る、スーパースターだ。
それにもかかわらず、である。
今回のブレイディの来日は、日本国内ではそれほど大きなニュースにはならなかった。スポーツ紙が少々触れた程度で、例えばレアル・マドリーのクリスティアーノ・ロナウドが日本に来た時とは、メディアの熱狂ぶりにも大きな違いがあった。これはひとえに、日本でのアメリカンフットボールという競技の立ち位置を現している。
最高峰であるNFLの舞台に日本人が立っていない現実。
端的に言えば、人気がないのだ。
その理由は様々にあるのだろうが、大きな要因のひとつとして挙げられるのが「最高峰であるNFLの舞台に、日本人が立ったことがない」ということではないだろうか。
欧州サッカーも、NBAも、MLBも日本人選手が挑戦し、彼らがそこで活躍したことで多くのファンの目に触れるようになった。
中田英寿を、田臥勇太を、野茂英雄を見たことがきっかけで、その他のスター選手にも目が行くようになったという人も多いだろう。
そんな中、北米四大プロスポーツの中で唯一、アメリカンフットボールだけはいまも、NFLのフィールドに立った日本人がいないのである。